公開日:2026.11.01
フォローアップミルクは必要?――9か月で切り替える?離乳食を食べないときは?
「離乳食をあまり食べないので、鉄が足りているか心配です」
外来でよくいただく質問です。
育児用ミルクとフォローアップミルクは、名前も見た目も似ていますが、役割は同じではありません。
今回は、母乳・育児用ミルク・フォローアップミルク・牛乳に含まれる鉄の量、離乳食からとれる鉄、国内外の指針や研究をもとに、切り替えが必要かを考えます。
📋 まず結論
・9か月になったことだけを理由に、フォローアップミルクへ切り替える必要はありません。
・離乳食をあまり食べないときも、母乳や育児用ミルクを続けて構いません。体重が増えないときは、まず食事の量と成長を確認します。
・鉄不足が心配なときは、母乳・ミルクの量と、肉・魚・卵・大豆製品などから鉄をどのくらいとれているかを合わせてみます。
・フォローアップミルクは、1歳以降に鉄が不足しやすい場合の選択肢の一つです。すでに使っていて食事と成長に問題がなければ、急いでやめる必要はありません。
1.育児用ミルクとフォローアップミルクの違い
育児用ミルクは、母乳の代わり、または母乳を補うものとして、乳児に必要な栄養を総合的にとれるように作られています。
フォローアップミルクは、離乳食が進んだ時期に不足しやすい栄養素を補うための食品です。乳児の栄養を全面的に担うことを目的にはしていません。
日本では、9か月頃から使える製品と、1歳頃から使う製品があります。製品の対象年齢は「この時期から使える」という目安で、切り替える時期を示すものではありません。
9か月頃は離乳食が1日3回へ進む時期ですが、食べる量や食品の種類には個人差があります。育児用ミルクを飲んでいる赤ちゃんは、離乳食を進めながら、そのまま育児用ミルクを続けて構いません。
2.飲み物に含まれる鉄と栄養素
鉄の含有量は、飲み物によって大きく異なります。
| 飲み物 | 鉄/100mL | 200mLの鉄 |
|---|---|---|
| 母乳 | 約0.04mg | 約0.08mg |
| 育児用ミルク(明治ほほえみ) | 0.81mg | 1.62mg |
| フォローアップミルク(明治ステップ) | 1.40mg | 2.80mg |
| 普通牛乳 | 約0.02mg | 約0.04mg |
※母乳と牛乳は食品成分表による目安、育児用ミルクとフォローアップミルクはメーカーの表示値です。製品によって成分は異なります。明治ステップは1〜3歳向けの製品です。
母乳600mLに含まれる鉄は約0.24mg、育児用ミルク600mLでは約4.9mgです。母乳の鉄は吸収されやすいため、含有量の差がそのまま吸収される量の差になるわけではありません。それでも、成長とともに鉄の必要量が増えると、母乳だけでは足りなくなります。
普通牛乳には、鉄がほとんど含まれていません。1歳以降に育児用ミルクから牛乳へ移ると、飲み物からとる鉄は大きく減ります。牛乳はカルシウムやたんぱく質の供給源ですが、鉄の供給源にはなりません。なお、授乳・離乳の支援ガイドでは、牛乳を飲み物として与えるのは1歳を過ぎてからとしています。
鉄以外の栄養素も比べると
同じメーカーの明治「ほほえみ」(育児用ミルク)と「ステップ」(1〜3歳向けのフォローアップミルク)を比べました。
| 栄養素(調乳後100mL) | ほほえみ | ステップ |
|---|---|---|
| エネルギー | 68kcal | 64.5kcal |
| たんぱく質 | 1.50g | 1.38g |
| 脂質 | 3.52g | 2.52g |
| 鉄 | 0.81mg | 1.40mg |
| 亜鉛 | 0.41mg | 0.625mg |
| カルシウム | 51mg | 112.5mg |
| ビタミンD | 0.88µg | 0.875µg |
※メーカー公式の栄養成分表示による比較です。特定の製品を勧めるものではありません。
ステップの方が、鉄は約1.7倍、亜鉛は約1.5倍、カルシウムは約2.2倍です。一方、ビタミンDはほぼ同じで、エネルギーと脂質はほほえみの方が多くなっています。フォローアップミルクは、すべての栄養素が多いわけではありません。
200mL飲んだ場合の鉄は、ほほえみで約1.6mg、ステップで約2.8mgで、差は約1.2mgです。この差が健康上の利益につながるかどうかは、食事から鉄をどのくらいとれているかによります。
3.赤ちゃんに必要な鉄と、離乳食からとれる鉄
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、鉄の推奨量は次のとおりです。
| 年齢 | 鉄の推奨量 |
|---|---|
| 6〜11か月 | 4.5mg/日 |
| 1〜2歳 | 4.0mg/日 |
これは、母乳・ミルク・離乳食を合わせた1日の目安です。個々の赤ちゃんの鉄不足を判定する基準ではなく、鉄の吸収率や体内の貯蔵量にも個人差があります。
赤ちゃんは、生まれたときに体内に蓄えた鉄を使いながら成長します。生後6か月頃からは、離乳食で鉄を補うことが重要になります。
育児用ミルクを1日600mL飲んでいれば、ほほえみの場合、ミルクだけで約4.9mgの鉄をとれます。母乳中心の赤ちゃんでは、離乳食からとる鉄がより重要です。
離乳食に含まれる鉄
食品成分表の「100g当たり」の量だけでは、赤ちゃんが実際にとれる鉄の量はわかりません。そこで、離乳食で食べる量に換算しました。
| 食品 | 鉄/100g | 量の例 | その量の鉄 |
|---|---|---|---|
| 豚レバー(生) | 13.0mg | 加熱前5g | 約0.65mg |
| 鶏レバー(生) | 9.0mg | 加熱前5g | 約0.45mg |
| 牛もも赤身肉(輸入牛・ゆで) | 3.5mg | 加熱後15g | 約0.53mg |
| かつお(なまり節) | 5.0mg | 15g | 約0.75mg |
| 卵黄(ゆで) | 4.7mg | 10g | 約0.47mg |
| 小松菜(ゆで) | 2.1mg | 20g | 約0.42mg |
| ほうれん草(ゆで) | 0.9mg | 20g | 約0.18mg |
| 絹ごし豆腐 | 1.2mg | 40g | 約0.48mg |
※日本食品標準成分表に基づく概算です。レバーは加熱前、牛肉・野菜・卵黄は加熱後の重量です。食品の種類、部位、調理方法によって値は異なります。例示量は推奨する量ではありません。
レバーは鉄が非常に豊富ですが、ビタミンA(レチノール)も多く含みます。鉄を補う目的で、毎日たくさん食べさせることは勧められません。
ほうれん草は鉄が多いイメージがありますが、ゆでたもの20gで約0.18mgです。野菜だけで十分な鉄を補うのは難しく、肉や魚、卵、大豆製品を組み合わせることが大切です。鉄を強化したベビーフードも、必要に応じて使えます。
鉄は、食品によって吸収されやすさが違う
肉や魚に含まれるヘム鉄は、比較的吸収されやすい鉄です。野菜、豆類、卵、鉄強化食品に含まれる非ヘム鉄は、一緒に食べるものによって吸収率が変わり、ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせると吸収されやすくなります。なお、肉や魚の鉄がすべてヘム鉄というわけではありません。
4.鉄不足を心配するのはどんなとき?
鉄不足のリスクは、離乳食の量だけでなく、何を食べているかで変わります。次のような場合は、鉄のとり方を確認したいところです。
・母乳中心で、離乳食の量が少ない状態が続いている
・肉や魚など、鉄を含む食品をほとんど食べない
・食べられる食品が限られ、鉄を含む食品の種類が少ない
・1歳以降、牛乳を多く飲み、そのために食事量が減っている
・早産や低出生体重など、鉄欠乏のリスクがある
当てはまっても、必ず鉄欠乏があるとは限りません。食事の内容と成長の状態を確認し、必要に応じて血液検査を検討します。
血液検査では、ヘモグロビンに加えてフェリチン(体内の鉄の蓄えを反映する値)を参考にします。フェリチンはかぜなどの炎症で高く出るため、結果の解釈には注意が必要です。
🏥 当院では、鉄不足が心配な場合、食事の内容と成長の状態を確認し、必要に応じて血液検査を行います。
米国の指針は、母乳で育つ赤ちゃんの鉄不足予防を重視しています
米国小児科学会(AAP)は2026年の臨床報告で、完全母乳で育つ正期産の赤ちゃんに、生後4か月までに鉄1mg/kg/日の補充を始めることを推奨しています。一方で、鉄を含む離乳食を始める6か月まで待つ選択肢も示しています。
さらに、すべての乳幼児に血液検査(血算とフェリチン)を行うことを推奨しています。検査の時期は1歳までの主な栄養によって異なり、母乳が主な場合は9〜12か月頃、育児用ミルクが主な場合は牛乳に移ったあとの15〜18か月頃です。また、1歳以降は牛乳などの量を1日約700mL(24オンス)までに抑えるよう勧めています。
日本では、健康な正期産の母乳栄養児全員に鉄剤を補充したり、全員に血液検査を行ったりすることは一般的ではありません。米国の推奨をそのまま当てはめる必要はありませんが、母乳で育つ赤ちゃんの鉄不足を予防する大切さを示しています。
5.離乳食をあまり食べないときは?
離乳食をあまり食べない場合も、フォローアップミルクへの切り替えを急ぐ必要はありません。母乳や育児用ミルクが、引き続き大切な栄養源になります。
まず確認したいのは、体重の増え方、母乳やミルクを飲む量、食べられる食品の種類、食事の形態です。離乳食をあまり食べなくても、成長が順調な赤ちゃんもいます。
体重の増え方が十分でない場合は、鉄だけでなく、エネルギーやたんぱく質の量も含めて評価します。フォローアップミルクには、育児用ミルクよりエネルギーや脂質が少ない製品もあり、体重が増えないときに切り替えれば改善するという根拠は十分ではありません。
まずは、なぜ体重が増えないのか、何が足りていないのかを確認します。
6.研究と指針はどう考えている?
鉄強化ミルクの研究(GUMLi試験)
オーストラリアとニュージーランドで行われた研究で、1歳児160人を、鉄強化ミルク(100mLあたり鉄約1.7mg)と牛乳のどちらかに分け、12か月間飲んでもらいました。
2歳時点で鉄欠乏があった割合は、牛乳群で24%(16/67人)、鉄強化ミルク群で7%(5/67人)でした。ただ、研究開始時の状態などを調整すると、統計学的に明確な差は確認できませんでした(調整オッズ比0.32、95%信頼区間0.09〜1.09)。一方、体内の鉄の蓄えを反映するフェリチンは、鉄強化ミルク群で有意に高くなりました。
この研究の比較対象は牛乳で、育児用ミルクではありません。使われたミルクは日本のフォローアップミルクと組成が異なり、研究資金はミルクのメーカーが提供し、鉄の指標は主な評価項目ではありませんでした。この結果から、日本の赤ちゃんが育児用ミルクからフォローアップミルクへ切り替えた方がよい、とはいえません。
日本の指針
「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」は、フォローアップミルクは母乳代替食品ではなく、離乳が順調に進んでいる場合は飲む必要はないとしています。
離乳が順調に進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、適切な体重増加がみられない場合には、医師に相談したうえで、必要に応じて活用を検討するとしています。ここでの「検討」は、選択肢の一つとして考えるという意味です。
体重の増え方が十分でないときは、まず授乳と食事の量、成長の状態、必要に応じて病気の有無を評価します。そのうえで、育児用ミルクを足す、離乳食の栄養密度を上げるなどの方法を考え、フォローアップミルクもその選択肢の一つになります。
海外の指針
世界保健機関(WHO)は2023年の指針で、12〜23か月児にフォローアップミルクを推奨しないとしています。この推奨は条件付きで、根拠の確実性は低いとされています。
欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)は2018年の提言で、1〜3歳児に一律の使用は必要ないとしながら、鉄やビタミンDなどを増やす手段の一つとして使える場合があるとしています。
両者の違いの背景には、対象とする地域の栄養事情、比較するミルクの種類、費用などがあります。国内外の指針に共通するのは、フォローアップミルクをすべての子どもに勧める必要はないという考え方です。
7.フォローアップミルクが役立つのはどんなとき?
たとえば1歳以降で、食事や成長はおおむね順調でも、肉や魚をあまり食べず、鉄が不足しやすい場合です。牛乳を飲む習慣がある子どもでは、その一部をフォローアップミルクに置き換えると、とれる鉄を増やせます。
牛乳を飲みすぎて食事量が減っているときは、置き換えより先に、牛乳の量と食事の内容を見直します。食事の工夫や鉄強化食品で補える場合もあり、フォローアップミルクはその中の選択肢の一つです。
費用は販売店や時期によって大きく変わり、同じメーカーでも、育児用ミルクとフォローアップミルクのどちらが安いかは店によって異なります。また、明治ステップは1〜3歳向けの製品で、価格を理由に9か月で切り替える必要はありません。
すでにフォローアップミルクを飲ませている場合
これまで飲ませていたことを心配する必要はありません。年齢に合った製品を使っていて、食事と成長に問題がなければ、急いでやめる必要はありません。
離乳食の代わりにたくさん飲んでいる場合や、ミルクのために食事量が減っている場合は、使い方を見直します。離乳食がまだ十分に進まず、ミルクが主な栄養源になっている乳児では、育児用ミルクを栄養の土台にします。
8.鉄不足が見つかったら
フォローアップミルクは鉄を増やすための食品で、鉄欠乏性貧血の治療薬ではありません。
治療に使う鉄剤のインクレミン®シロップ5%では、1日量が1歳未満で2〜4mL(鉄として12〜24mg)、1〜5歳で3〜10mL(鉄として18〜60mg)です。明治ステップ200mLの鉄は約2.8mgなので、治療で使う量とは大きな差があります。
⚠️ フォローアップミルクを飲んでいても、鉄欠乏性貧血と診断された場合は治療が必要です。原因と程度に応じて、食事の見直しや鉄剤による治療を行います。
9.まとめ
9か月になったことだけを理由に、フォローアップミルクへ切り替える必要はありません。
育児用ミルクにも鉄は含まれており、離乳食が十分に進まない時期は、引き続き育児用ミルクが大切な栄養源です。フォローアップミルクには鉄などを多く含む製品があり、1歳以降に食事からの鉄が不足しやすい場合には役立つこともあります。
判断の目安は月齢ではなく、お子さんが何をどのくらい食べ、母乳やミルクをどのくらい飲み、どのように成長しているかです。
フォローアップミルクを使っていなくても、不安になる必要はありません。すでに適切に使っている場合も、心配しすぎる必要はありません。食事と成長に合わせて、必要な栄養の補い方を考えていきましょう。
参考文献
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5. 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書.2024年10月.
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10. インクレミンシロップ5% 電子添文(2023年7月改訂 第1版)(2026年11月1日閲覧).
※2026年11月1日時点の情報に基づいています。