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スタッフコラム

2026.10.12

インフルエンザシリーズ第3回:インフルエンザの検査、早すぎるとわからない?――いつ検査するのがよいのでしょうか

「熱が出てすぐに検査しても、インフルエンザはわからないんですよね?」

診察室で、よくいただく質問です。

「発熱してから12時間たたないと検査できない」

「朝から熱が出たので、夕方まで待ってから受診したほうがよい」

そんな話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。検査で「陰性」と言われたのに、翌日にはインフルエンザと診断された、という経験をお持ちの方もいると思います。

では、インフルエンザの検査は、いつ受けるのがよいのでしょうか。

今回は、インフルエンザの「診断と検査」について、検査の特徴と臨床研究のデータをもとに考えてみます。

📋 まず結論

インフルエンザかどうかは、検査結果だけでは決まりません。症状や診察所見、周囲の流行状況から「インフルエンザらしさ」を考えたうえで、検査結果を解釈します。

一般的な迅速抗原検査は、陽性であればインフルエンザの可能性が高い検査です。しかし、陰性でもインフルエンザを否定しきれません。熱が出て間もない時期には、ウイルスの量が少なくて検出できないことがあるためです。

「発熱してから○時間たたないと検査できない」という決まりはありません。熱が出た直後は陰性になりやすいので、元気があれば、半日ほどたってから受診するのもひとつの方法です。ぐったりしているなど心配な症状があれば、時間を気にせず受診してください。

1.インフルエンザは、検査をしないと診断できない?

インフルエンザでは、次のような症状がみられます。

・急な発熱

・悪寒

・頭痛

・だるさ

・筋肉痛や関節痛

・咳

・のどの痛み

・鼻水

どれもインフルエンザに特有の症状ではなく、ほかのウイルスによる感染症でもみられます。

そこで診察では、症状に加えて、周囲でインフルエンザが流行しているか、熱が出てからどのくらいたっているか、全身の状態はどうかを合わせて判断します。家族がインフルエンザと診断されていて症状も典型的な場合など、検査をせずに診断することもあります。

検査は、その判断を補助する情報のひとつです。

2.迅速抗原検査は、何を見ている?

クリニックでよく行われているのが、迅速抗原検査です。鼻の奥などから検体をとり、インフルエンザウイルスの「抗原」と呼ばれる成分を検出します。短時間で結果がわかるのが大きな利点です。

陽性になるには、とった検体の中に、検出できるだけの量の抗原が含まれている必要があります。ウイルスが体の中にいても、量が少なければ検査には反応しません。

3.迅速抗原検査は、どのくらい正確?

迅速抗原検査は便利な検査ですが、「インフルエンザを100%見つけられる検査」ではありません。

検査の正確さは、「感度」と「特異度」という2つの数字で表します。

・感度:本当にインフルエンザの人のうち、検査で陽性になる割合

・特異度:インフルエンザではない人のうち、検査で陰性になる割合

米国疾病予防管理センター(CDC)は、一般的な迅速抗原検査の感度をおよそ50〜70%、特異度を95〜99%としています。多くの研究をまとめたメタ解析でも、従来型の迅速抗原検査の感度はA型で約54%、B型で約53%、特異度は約99%でした。

仮に感度が60%だとすると、インフルエンザにかかっている100人を検査しても、40人ほどは陰性になります。これを「偽陰性」といいます。特異度は高いので、インフルエンザではない人が陽性になる「偽陽性」は多くありません。

陽性のときは比較的信頼できる一方、陰性でもインフルエンザを否定できません。これが迅速抗原検査の特徴です。

同じメタ解析では、機器で判定する新しいタイプの抗原検査は感度がA型で約80%、B型で約77%と高く、子どもは大人より感度が高いことも示されています。使う検査キットや年齢によって、数字には幅があります。

4.「発熱してから12時間たたないと検査できない」は本当?

検査ができない、という決まりはありません。ただ、根拠のない話でもありません。

インフルエンザに感染すると、体の中でウイルスが増えていきます。A型では、発症から1〜2日目にウイルスの排出量がピークになると報告されています。熱が出た直後は、検査で検出できる量にまだ達していないことがあり、その分、偽陰性が増えます。

2014年に報告された国内の小児科外来の研究では、迅速抗原検査の感度は、発熱後6時間以内で37.5%、12時間以内で60.9%、12時間を超えると80.0%でした。成人を対象とした国内の研究でも、偽陰性だった人は、正しく陽性と出た人より、発症から検査までの時間が短かったと報告されています。

とはいえ、早い時間帯でも陽性になる人は少なくありません。熱が出てから24時間以内に受診した1〜3歳の子どもを対象としたフィンランドの研究では、迅速抗原検査の感度は全体で77%(A型90%、B型25%)でした。

「早すぎると陰性になりやすい」のであって、「早すぎると検査できない」わけではありません。

5.熱が出たら、いつ受診すればよい?

元気があり、水分がとれているなら、熱が出てすぐに受診する必要はありません。迅速抗原検査は、熱が出た直後より、半日ほどたってからのほうがインフルエンザを見つけやすくなります。夜に熱が出ても、眠れているようなら翌朝の受診でかまいません。

待つのは半日ほどで十分です。抗インフルエンザ薬を使う場合は、発症から48時間以内に始めるのが原則だからです(詳しくは次回お話しします)。

⚠️ 次のような場合は、検査のタイミングを気にせず受診してください。

ぐったりしている、水分がとれない、呼吸が苦しそう、意識がおかしい、けいれんがあるなど、心配な症状があるとき。

生後3か月未満の赤ちゃんの発熱や、喘息などの持病がある場合も、早めに受診してください。

熱が出たばかりでも、診察をすれば、インフルエンザらしさがどの程度あるか、ほかに注意すべき病気がないかを判断できます。早い時間帯で検査が必要なときは、より感度の高いPCR検査を選ぶこともあります。

6.検査が陰性なら、インフルエンザではない?

そうとは限りません。同じ「陰性」でも、状況によって意味が変わります。

インフルエンザがほとんど流行していない時期で、症状もインフルエンザらしくなければ、陰性の結果どおり、インフルエンザの可能性は低いと考えます。

周囲で大流行していて、典型的な症状があり、熱が出てまだ数時間という場合はどうでしょうか。検査の前からインフルエンザの可能性が高いので、陰性でも否定はできません。

陽性の場合も考え方は同じで、流行していない時期の陽性は、慎重に解釈することがあります。

なお、フルミスト(鼻にスプレーするワクチン)を接種したあと一定の期間は、ワクチンのウイルスによって、インフルエンザにかかっていなくても検査が陽性になることがあります。陽性になりやすいのは、多くは接種後1〜2週間までです。ただ、添付文書では、接種後4週間以内はワクチンのウイルスが残っている可能性があるとされています。接種から4週間以内に発熱などで受診されるときは、フルミストを接種したことをお伝えください。

7.検査をもう一度する意味はある?

あります。ただし、陽性になるまで何度も繰り返す、という意味ではありません。

再検査や、より感度の高い検査を考えるのは、たとえば次のような場合です。

・熱が出てからまだ数時間しかたっていない

・インフルエンザらしい症状が続いている

・家族や学校など、身近なところでインフルエンザが確認されている

そのうえで、結果によってその後の対応が変わるかどうかを考えます。

・抗インフルエンザ薬を使うかどうかを決めたい(詳しくは次回お話しします)

・肺炎などの合併症や、ほかの病気も考える必要がある

・基礎疾患があり、より慎重な判断が必要

・周囲への感染対策を判断する必要がある

結果がどちらであっても対応が変わらないのであれば、検査を繰り返す必要はありません。

8.もっと感度の高い検査はある?

PCRなど、ウイルスの遺伝子を検出する検査(分子検査)があります。迅速抗原検査より少ない量のウイルスでも検出できるため、熱が出て間もない時間帯の検査にも向いています。

米国感染症学会(IDSA)のガイドラインは、外来では迅速抗原検査よりも迅速分子検査を推奨しています。先ほどのメタ解析では、迅速分子検査の感度はA型で約92%、B型で約95%、特異度は約99%でした。

それでも、全員にPCR検査を行うわけではありません。結果が出るまでの時間や費用が違うため、患者さんごとに必要な検査を選んでいます。

🏥 当院でも、症状や経過から必要と判断した場合には、迅速抗原検査に加えてPCR検査を行っています。迅速抗原検査だけでは判断が難しいときに役立ちます。

当院のPCR検査では、A型の亜型(A/H1N1pdm09、A/H3N2など)まで判別しています。検出された亜型は、地域でいまどの型が流行しているかを知る手がかりにもなります。

9.まとめ

インフルエンザの検査について、覚えておいていただきたいのは次の5つです。

1. インフルエンザの診断は、検査結果だけでは決まりません。

2. 迅速抗原検査は、陽性ならインフルエンザの可能性が高い一方、陰性でも否定はできません。

3. 熱が出た直後は、偽陰性が増えます。元気で水分がとれていれば、半日ほどたってからの受診でも大丈夫です。

4. 「発熱してから12時間たたないと検査できない」という決まりはありません。心配な症状があれば、時間を気にせず受診してください。

5. 検査や再検査をするかどうかは、「その結果が、その後の判断に役立つか」で考えます。


次回は、インフルエンザと診断されたときの

「薬は早く飲んだほうがよいの?」

「48時間以内というのは、どういう意味?」

という疑問について、臨床試験のデータをもとに考えます。


参考文献

1. Centers for Disease Control and Prevention. Information for Clinicians on Rapid Diagnostic Testing for Influenza.(2026年10月12日閲覧)

2. Merckx J, Wali R, Schiller I, et al. Diagnostic Accuracy of Novel and Traditional Rapid Tests for Influenza Infection Compared With Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction: A Systematic Review and Meta-analysis. Ann Intern Med. 2017;167(6):394-409.

3. Ip DKM, Lau LLH, Chan KH, et al. The Dynamic Relationship Between Clinical Symptomatology and Viral Shedding in Naturally Acquired Seasonal and Pandemic Influenza Virus Infections. Clin Infect Dis. 2016;62(4):431-437.

4. Nakao A, Hisata K, Matsunaga N, et al. The clinical utility of a near patient care rapid microarray-based diagnostic test for influenza and respiratory syncytial virus infections in the pediatric setting. Diagn Microbiol Infect Dis. 2014;78(4):363-367.

5. Tanei M, Yokokawa H, Murai K, et al. Factors influencing the diagnostic accuracy of the rapid influenza antigen detection test (RIADT): a cross-sectional study. BMJ Open. 2014;4(1):e003885.

6. Heinonen S, Silvennoinen H, Lehtinen P, et al. Feasibility of diagnosing influenza within 24 hours of symptom onset in children 1-3 years of age. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2011;30(3):387-392.

7. 第一三共株式会社.フルミスト点鼻液 電子添文.2026年8月改訂(第6版).(2026年10月12日閲覧)

8. UK Health Security Agency. UK Influenza Network Laboratories on interpretation of influenza-positive results: 2021 to 2022 season.(2026年10月12日閲覧)

9. Uyeki TM, Bernstein HH, Bradley JS, et al. Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America: 2018 Update on Diagnosis, Treatment, Chemoprophylaxis, and Institutional Outbreak Management of Seasonal Influenza. Clin Infect Dis. 2019;68(6):e1-e47.

※2026年10月12日時点の情報に基づいています。

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