2026.10.12
インフルエンザシリーズ第5回:インフルエンザ、家ではどう過ごせばいい? ―― 解熱剤、登園・登校、受診の目安
「熱が高いけれど、解熱剤は使っていいですか?」
「いつから保育園や学校に行けますか?」
インフルエンザと診断されたあと、よく聞かれる質問です。
インフルエンザの多くは、数日間熱が続いたあと、自然に治っていきます。家で過ごす間は、熱の数字だけでなく、お子さん全体の様子をみることが中心になります。今回は、解熱剤の使い方、登園・登校の目安、もう一度受診したほうがよいサインを中心に整理します。
📋 まず結論
解熱剤は、熱を下げきるためではなく、つらさを和らげるために使います。子どもにはアセトアミノフェンを使い、大人用の解熱鎮痛薬は使わないでください。
熱の高さよりも、水分がとれているか、眠れているか、呼吸や意識に変化がないかが目安になります。
異常行動は、薬を飲んでも飲まなくても起こります。発熱から少なくとも2日間は、お子さんを一人にしないでください。
登園・登校できるのは「発症後5日」と「解熱後2日(幼児は3日)」の両方を満たしてからです。再検査はいりません。
熱がぶり返す、4日以上続く、呼吸・水分・意識に変化があるといったときは、もう一度受診しましょう。
1.家で過ごすときの基本
水分
一度にたくさん飲ませる必要はありません。少量をこまめに飲ませてください。水、お茶、スープ、経口補水液など、本人が飲みやすいもので構いません。吐き気があるときは、ひと口ずつから始めます。
飲んだ量の数字よりも、おしっこが出ているか、口の中が乾きすぎていないかをみてください。
食事
熱がある間に食欲が落ちるのは、よくあることです。数日間あまり食べられなくても、水分がとれていて、ぐったりしていなければ、無理に食べさせる必要はありません。食べられるようになったら、普段の食事に少しずつ戻していきます。インフルエンザを早く治す特別な食べ物はありません。
睡眠と服装
まずは、しっかり休ませてください。寒気で震えているときは温かくし、熱が上がりきって暑がるときは薄着にして、布団もかけすぎないようにします。汗をたくさんかかせても、早く治るわけではありません。
入浴
入浴でインフルエンザが悪化するという根拠はありません。比較的元気で水分もとれていれば、短時間の入浴やシャワーで構いません。ぐったりしている、ふらつく、水分がとれていないときは、体を拭く程度にしておきましょう。
2.解熱剤の使い方
解熱剤は、熱や痛みによるつらさを和らげ、水分をとったり眠ったりしやすくするための薬です。インフルエンザそのものを治す効果はありません。
使うかどうかは、熱の数字よりも、本人がつらそうかで決めます。眠れない、頭や体の痛みが強い、つらくて水分がとれない、といったときが使いどきです。熱が高くても、眠れていて水分もとれているなら、無理に使う必要はありません。
解熱剤を使っても、熱は1℃前後下がる程度のことが多く、平熱まで下がらないこともよくあります。数時間たつと、また上がってくることもあります。熱が上がってきても、薬が効いていないわけではありません。
アセトアミノフェンが基本です
小児のインフルエンザでは、解熱剤としてアセトアミノフェン(カロナール®など)が推奨されています。量はお子さんの体重に合わせて処方していますので、処方された量を守り、次に使うまで4〜6時間以上あけてください。
アセトアミノフェンは、市販のかぜ薬にも含まれていることがあります。ほかの薬と一緒に使うときは、成分が重なっていないか、薬剤師に確かめておくと安心です。
使わないでほしい解熱剤
インフルエンザのお子さんには、アスピリンなどのサリチル酸系の薬、ジクロフェナク(ボルタレン®など)、メフェナム酸(ポンタール®など)を使いません。アスピリンは、ライ症候群という重い病気との関係が知られています。ジクロフェナクは、インフルエンザ脳症の重症化との関係が報告されています。メフェナム酸も同じ懸念から、小児のインフルエンザによる発熱には使わないこととされています。
家にある大人用の解熱鎮痛薬(市販薬を含む)を、子どもに使わないでください。迷ったときは、薬局やクリニックでお尋ねください。
「解熱剤を使うと治りが遅くなる」と心配される方もいます。かぜなどで熱のあるお子さんを対象にした臨床試験では、アセトアミノフェンを使っても、熱の続く期間が長くなるという結果は出ませんでした。インフルエンザの大人を対象にした小規模な試験でも、治るまでの期間に差はみられていません。つらいときに使うのをためらう必要はありません。
3.異常行動への備え
前回お伝えしたとおり、異常行動は薬の種類や、飲んだかどうかに関係なく報告されています。急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、うろうろ歩き回る、といった行動です。インフルエンザそのものによって起こりうると考えられています。
⚠️ 発熱から少なくとも2日間は
・お子さんを一人にしない
・玄関や全ての部屋の窓の鍵を確実にかける(補助錠があれば使う)
・ベランダに面していない部屋で寝かせる
・窓に格子のある部屋があれば、その部屋で寝かせる
・一戸建てでは、できるだけ1階で寝かせる
異常行動が短い時間でおさまり、そのあといつもどおり話せるようなら、安全を確保して見守ります。続く、くり返す、呼びかけへの反応が鈍いといったときは、インフルエンザ脳症のサインのことがあります。6章のとおり、すぐに受診してください。
4.家族にうつさないために
インフルエンザは、発症の前日から、発症後3〜7日ほどウイルスを出すとされています。熱が下がってからも、しばらくは出ています。
家庭内の感染をすべて防ぐのは難しいものの、次のことは役に立ちます。
・こまめな手洗い(とくに看病する人)
・咳やくしゃみのときは口と鼻を覆う
・ときどき換気をする
・顔を近づけて過ごす時間を減らす
・症状のある人は、できる範囲でマスクをする
お子さんを完全に隔離する必要はありません。安心して休める環境を優先しましょう。
家族への予防投与
抗インフルエンザ薬には、家族などがインフルエンザになったときに、発症を予防する目的で使えるものがあります。ただし、同居家族の全員が対象になるわけではありません。重症化しやすい持病がある方などで、メリットが大きいかどうかを個別に判断します。
予防のために使う場合は、インフルエンザにかかった方と接触してから48時間以内に始めるのが原則です。家庭内では接触が続くため、予防投与を考えたいときは、家族の発症がわかった時点でできるだけ早くご相談ください。健康保険は使えず、自費になります。予防投与をしても感染を完全には防げず、ワクチンの代わりにもなりません。
重症化しやすいご家族がいて心配なときも、遠慮なくお声がけください。
5.登園・登校の目安
学校保健安全法施行規則では、インフルエンザの出席停止期間を次のように定めています。
・小学生以上:発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで
・幼児(小学校入学前):発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後3日を経過するまで
保育所でも、国のガイドラインで同じ基準が目安とされています。
日数の数え方
発症した日(熱が出た日)と解熱した日は、どちらも「0日目」と数えます。「5日を経過」とは、5日目が終わることです。登園・登校できるのは、早くてもその翌日です。
解熱とは、解熱剤を使わずに平熱に下がった状態を指します。解熱剤で下がっている間は、解熱とは数えません。
例1:水曜日に発症し、金曜日に解熱した場合
・発症後5日の経過:月曜日が5日目 → 火曜日から
・解熱後2日の経過(小学生以上):日曜日が2日目 → 月曜日から
・解熱後3日の経過(幼児):月曜日が3日目 → 火曜日から
→ 両方を満たすのは、小学生以上も幼児も火曜日からです。
例2:水曜日に発症し、日曜日に解熱した場合
・発症後5日の経過:月曜日が5日目 → 火曜日から
・解熱後2日の経過(小学生以上):火曜日が2日目 → 水曜日から
・解熱後3日の経過(幼児):水曜日が3日目 → 木曜日から
→ 小学生以上は水曜日から、幼児は木曜日からです。
薬で早く熱が下がっても、ウイルスはまだ出ています。発症後5日までは休む必要があります。
登園・登校の前に、もう一度インフルエンザの検査をする必要はありません。園や学校によっては、登園届(保護者が記入)や医師の意見書、経過の記録などの提出を求められることがあります。通っている園・学校の決まりをご確認ください。
6.もう一度受診したほうがよいサイン
⚠️ 次のような様子があれば、夜間や休日でも受診してください
・呼吸が苦しそう、呼吸が速い、息をするたびに胸がぺこぺこへこむ
・唇の色が悪い
・水分がとれない、おしっこが半日以上出ない
・ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い
・何度も吐く
・けいれんがあった(5分以上続く、呼吸がおかしい、意識が戻らない場合は救急車を)
・意味の通らないことを言う、興奮して落ち着かないといった状態が続く、またはくり返す
・喘息などの持病があり、症状が強い
呼びかけても反応しない、呼吸が止まりそう、唇が紫色といった、一刻を争う様子のときは、ためらわずに119番に電話してください。受診するか迷うときは、子ども医療電話相談(#8000)も利用できます。
⚠️ 経過の中で気をつけたい変化(診療時間内の受診で構いません)
・熱がいったん下がったのに、また上がってきた
・熱が4日以上続いている
・耳を痛がる、耳だれが出る
熱がぶり返したり長引いたりするときは、肺炎や中耳炎などの合併症が起きていないか確認が必要です。咳が強くなる、呼吸が苦しくなってきたときは、1つ目のボックスのとおり受診してください。
7.喘息のあるお子さん
前回(第4回)お伝えしたように、喘息のあるお子さんでは、インフルエンザをきっかけに喘息が悪化することがあります。
・吸入ステロイドなど、普段の治療薬は自己判断でやめずに続けます
・発作のときの対応を決めている場合は、その手順に沿ってください
・ゼーゼー・ヒューヒューする、咳込んで眠れない、横になれない、発作止めの吸入をしても良くならない(または効果がすぐ切れる)ときは、早めに受診してください
🏥 当院で喘息の治療を受けているお子さんは、インフルエンザの経過中に喘息の症状が気になったら、診察日を待たずにご相談ください。
8.まとめ
家で過ごすときに、覚えておいていただきたいのは次の7つです。
1. 解熱剤はつらさを和らげるためのものです。子どもにはアセトアミノフェンを使い、大人用の薬は使わないでください。
2. 熱の数字よりも、水分・睡眠・呼吸・意識をみてください。
3. 発熱から少なくとも2日間は、お子さんを一人にしないでください。
4. 予防投与は、重症化しやすいご家族がいる場合に個別に判断します。
5. 登園・登校は「発症後5日」と「解熱後2日(幼児は3日)」の両方を満たしてから。再検査は不要です。
6. 熱のぶり返しや4日以上続く発熱、呼吸・水分・意識の変化があれば、もう一度受診してください。
7. 喘息のあるお子さんは、普段の治療を続け、悪化のサインがあれば早めに受診してください。
5回にわたって、インフルエンザの流行状況、ワクチン、検査、治療、家での過ごし方をお伝えしてきました。どの回にも共通するのは、検査の結果や熱の数字だけで決めず、お子さんの年齢や持病、そのときの様子を踏まえて考えることです。気になることがあれば、いつでもご相談ください。
参考文献
1. 厚生労働省.インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について(医薬品等安全対策部会における合意事項).平成13年5月30日.(2026年10月12日閲覧)
2. あゆみ製薬.カロナール細粒20%/50% 電子添文(2026年8月改訂 第3版).(2026年10月12日閲覧)
3. Gupta H, Shah D, Gupta P, Sharma KK. Role of paracetamol in treatment of childhood fever: a double-blind randomized placebo controlled trial. Indian Pediatr. 2007;44(12):903-911.
4. Jefferies S, Braithwaite I, Walker S, et al. Randomized controlled trial of the effect of regular paracetamol on influenza infection. Respirology. 2016;21(2):370-377.
5. 厚生労働省.令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A(令和8年9月30日版).(2026年10月12日閲覧)
6. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会.2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針.2025年10月7日.
7. 中外製薬.タミフルカプセル75/タミフルドライシロップ3% 電子添文.(2026年10月12日閲覧)
8. 学校保健安全法施行規則(昭和33年文部省令第18号)第19条.
9. こども家庭庁.保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)(2023(令和5)年5月一部改訂)〈2023(令和5)年10月一部修正〉.
10. 公益財団法人日本学校保健会.学校において予防すべき感染症の解説〈令和5年度改訂〉.
※2026年10月12日時点の情報に基づいています。