2026.09.20
「とりあえずアレルギー検査」の前に―検査をしたほうがいい場合、しなくていい場合
「血液検査をすれば、何が食べられて何が食べられないか分かりますか?」
外来でよく聞かれる質問です。
結論からいうと、血液検査の結果だけでは、食物アレルギーかどうかは決められません。
この記事は、「アレルギー検査はしないほうがいい」という記事ではありません。検査は、必要な場面で適切に使えば、とても役に立ちます。一方で、「念のため」「一通り調べておこう」と検査をすると、予想していなかった陽性結果が出て、かえって食べられるものを減らしてしまうことがあります。
大切なのは、次の3点です。
・検査が陽性でも、それだけで食物アレルギーとは診断できない
・症状なく食べられているものは、検査が陽性でも原則としてやめない
・検査は「何を疑っているのか」を考えて、原則として必要な項目を選んで行う
この記事では、主に小児の即時型(IgE依存性)食物アレルギーについて説明します。
目次
アレルギー検査で分かること
「感作(かんさ)」とは
体は、食べ物などに含まれるたんぱく質に反応する抗体(IgE抗体)をつくることがあります。この状態を「感作」といいます。
ただし、感作されていることと、実際に食べて症状が出ることは同じではありません。
💨 たとえば、煙探知機は料理の煙にも反応します。「煙を感知した」ことは事実ですが、それだけで火事とは限りません。
アレルギー検査も少し似ています。
検査は、その食べ物に反応するIgE抗体があること、つまり「感作」を捉えます。しかし、実際に食べたときに症状が出るかどうかまで、検査だけで決めることはできません。
一般に「アレルギー検査」と呼ばれるものには、血液検査(特異的IgE抗体)と皮膚プリックテストがあります。どちらも主に「感作」を調べる検査です。
一般的な即時型(IgE依存性)の食物アレルギーでは、「その食べ物を食べて症状が出たという経過」と「その食べ物に感作されていること」を組み合わせて診断します。
特異的IgE抗体が陰性であれば、IgEが関与する食物アレルギーの可能性は低くなります。ただし、陰性結果の解釈には注意が必要です。これについては後ほど説明します。
また、食物アレルギーにはIgE抗体が主に関与しないタイプもあり、その場合は血液検査では診断できません。
皮膚プリックテストとは
腕などの皮膚に食べ物のエキスを一滴のせ、専用の針で皮膚の表面を軽く刺激します。15〜20分ほど待ち、皮膚が赤く膨らむ「膨疹」の大きさを測ります。
採血が不要で、その場で結果が分かるのが特徴です。
血液検査と同じように「感作」を調べる検査で、感作を見つける力は高い一方、陽性だからといって、その食べ物を食べられないとは限りません。
特に乳児では、皮膚プリックテストが診断の助けになることがあります。また、果物や野菜などでは、市販の検査用エキスではなく、実際の食品を使って検査することもあります。
診断に迷うときは「食物経口負荷試験」
診断がはっきりしないときや、これまで除去していた食べ物をどのくらい食べられるか確認するときに重要なのが、食物経口負荷試験です。
原因と疑われる食べ物を医療機関で少量から段階的に食べ、実際に症状が出るかどうかを確認します。
血液検査や皮膚検査が「食べたときに反応する可能性」を推測する検査なのに対し、負荷試験は実際に食べて確認する検査です。
これまでの症状と検査結果から診断できる場合もあるため、すべての人に負荷試験が必要なわけではありません。診断がはっきりしない場合や、現在どのくらい食べられるかを確認したい場合などに、必要性を判断します。
検査で「陽性」なら、アレルギー?
検査が陽性でも、それだけで食物アレルギーとは診断できません。
一般に、特異的IgEの数値が高くなるほど、その食べ物で症状が出る可能性は高くなります。しかし、検査値だけを見て「食べられる」「食べられない」を決めることはできません。
たとえば、牛乳の特異的IgE抗体価が3.0 kUA/Lの場合、牛乳200mLまでの負荷試験で症状が出る可能性は、1歳未満では約90%、1歳では約50%、2歳以上では約30%と報告されています。
牛乳の特異的IgE抗体価 3.0 kUA/L、牛乳200mLまでの負荷試験で症状が出る可能性
1歳未満
1歳
2歳以上
同じ検査値でも、年齢によって意味が違うことが分かります。
さらに、この確率は、年齢、検査方法、食べ物の種類、負荷試験で食べる量、これまで実際に食べて症状が出たことがあるかなどによって変わります。
特に注意したいのは、これまで食べて症状が出た子どもと、症状はなく「念のため」検査を受けた子どもでは、同じ検査値でも意味が違うということです。
そのため、検査結果は数値だけではなく、それまでの経過と一緒に判断します。
数値が高いほど、症状も重くなる?
特異的IgEの数値だけから、実際に症状が出たときの重さを正確に予測することはできません。
そのため、「クラス6だから必ず重症」「数値が低いからアナフィラキシーにはならない」とは判断できません。
一方、特異的IgEが高値であることや皮膚プリックテストが強陽性であることは、食物経口負荷試験を安全に行うためのリスク評価や、緊急時に使用するアドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方を考える際の手がかりの一つになります。
検査値だけではなく、過去にどのような症状が出たか、どのくらいの量で症状が出たか、喘息などの合併症があるかなどを含めて総合的に評価します。
陰性なら、アレルギーではない?
血液検査が陰性であれば、IgEが関与する食物アレルギーの可能性は低くなります。しかし、陰性だから絶対にアレルギーではない、とは言い切れません。
たとえば、食べた直後に毎回症状が出るなど、これまでの経過から強く疑われる場合や、生後6か月未満の乳児では、血液検査だけでは判断できないことがあります。特に乳児では、血液検査で特異的IgE抗体が陰性でも、皮膚プリックテストが診断の助けになる場合があります。
また、IgEが主に関与しないタイプの食物アレルギーは、特異的IgE抗体の検査だけでは診断できません。
✅ 検査をしたほうがいい場合
検査は、疑わしい食べ物やアレルゲンに絞って行うのが原則です。
特定の食べ物を食べた後に症状が出た
食べてからおおむね2時間以内に、じんましん、唇やまぶたの腫れ、嘔吐、咳やゼーゼー、ぐったりするなどの症状が出た場合です。
「何を、どのくらい食べて、何分後に、どのような症状が出たか」という情報をもとに、疑わしい食べ物を選んで検査します。
乳児の湿疹が、適切に治療してもなかなか改善しない
乳児の湿疹があるからといって、すべて食物アレルギーが原因というわけではありません。
まずスキンケアや外用薬で湿疹をしっかり治療することが大切です。それでも改善しない場合などには、食物アレルギーの関与を考えて検査することがあります。
多数の食品への感作がみつかった場合など、離乳食の進め方に専門的な判断が必要なときは、アレルギー専門医への相談を検討します。
花粉症があり、生の果物や野菜で口がかゆくなる
花粉と食べ物に含まれるたんぱく質の構造が似ているために起こる「花粉―食物アレルギー症候群」があります。
この場合は、原因となる果物だけではなく、関連する花粉の特異的IgEを調べることが診断の助けになります。
ダニ・花粉・ペットなどの吸入アレルゲンが疑われる
鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、咳などが季節や環境と関連して繰り返す場合です。
原因となるアレルゲンが分かれば、環境整備などの対策につながります。また、スギ花粉症やダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対して舌下免疫療法や皮下免疫療法を検討するときにも、原因となるアレルゲンの確認が必要です。
治療方針を決めるために必要な場合
食物経口負荷試験を行うかどうか、除去している食品をどのように解除していくかなど、今後の治療方針を考えるために検査を行うことがあります。
⚠️ 「とりあえず」の検査を避けたほうがいい場合
すでに食べていて、症状のない食べ物
普段から症状なく食べられている食べ物は、検査が陽性でも、原則として除去する必要はありません。
「検査が陽性だったから」という理由だけで、これまで食べられていた食品をやめないようにしましょう。
乳児の「念のため」の検査
まだ食べたことがない食品について、「アレルギーがあると怖いから、離乳食を始める前に一通り調べておこう」と考えることがあります。
しかし、症状がない段階で一律に検査することは、原則として勧められません。
まだ食べたことがない食品では、検査が陽性でも、実際に食べたときに症状が出るかどうかは分かりません。その結果、「念のため除去しましょう」となり、本当は食べられる食品の開始が遅れてしまう可能性があります。
湿疹が強い乳児でも、まず湿疹を十分に治療することが大切です。そのうえで、食物アレルギーを疑う経過がある場合などには、離乳食の進め方や検査の必要性を医師と相談します。
数十項目を一度に調べるセット検査
一度に多くのアレルゲンを調べられる検査(Viewアレルギー39、ドロップスクリーンなど)があります。
これらの検査は定量性が十分ではなく、原因がはっきりしないときに手がかりを探す「スクリーニング検査」として位置づけられています。食物アレルギーの診断や、その後の臨床経過の評価に用いることは推奨されていません。
また、調べる項目が増えるほど、実際の症状とは関係のない「予想外の陽性」が見つかる可能性もあります。
たくさん調べれば、より正確になるとは限りません。食物アレルギーが疑われる場合は、これまでの症状から原因として疑わしい食品を考え、必要な検査を選ぶことが大切です。
「遅延型フードアレルギー検査(IgG抗体)」
食物に対するIgG抗体を多数測定して、「遅延型フードアレルギー」を調べるとする検査があります。
しかし、食物特異的IgG抗体は食物アレルギーのない人にも認められ、むしろその食品を食べていることを反映している場合があります。
食物経口負荷試験の結果とも一致せず、食物アレルギーの診断に用いることは推奨されていません。日本を含む複数のアレルギー学会が、IgG検査を食物アレルギーの診断に使用しないよう注意を呼びかけています。
この結果だけをもとに多数の食品を除去すると、栄養不足や成長への影響につながる可能性があります。
⚠️ 検査結果だけで食べ物をやめる前に
⚠️ 検査が陽性でも、自己判断で食べ物をやめないことが大切です。
不要な除去によって、適切な時期の摂取開始を妨げる可能性があります
湿疹のある乳児を対象とした日本のPETIT試験では、湿疹を十分に治療したうえで、医師の管理下で加熱した卵の粉末をごく少量から段階的に継続して摂取したグループでは、1歳時点の卵アレルギーが60人中5人(8%)でした。一方、摂取しなかったグループでは61人中23人(38%)でした。
1歳時点の卵アレルギー(PETIT試験)
摂取したグループ
摂取しなかったグループ
ℹ️ この研究は、「アレルギーが心配でも、とにかく家庭で卵を食べさせればよい」という意味ではありません。湿疹を十分に治療したうえで、医師の管理下でごく少量から段階的に摂取した研究です。
一方、検査で感作されているという理由だけで、安易に鶏卵を除去することも推奨されていません。
食べられていたものが、食べられなくなることがあります
感作はあっても症状なく食べられていた食品を長期間除去した後、再び食べた際に強いアレルギー反応を起こした症例が報告されています。
特に重い湿疹のある子どもなどで報告されています。どのくらいの頻度で起こるのかは分かっていませんが、「念のため除去しておけば安全」とは限りません。
これまで普通に食べられている食品を、検査結果だけで中止しないことが大切です。
除去が長引き、診断がつかないままになることがあります
乳幼児期に発症した鶏卵・牛乳・小麦アレルギーは、成長とともに食べられるようになる子どもが多く、一般に3歳までに約半数、就学頃までに6〜7割程度が耐性を獲得するとされています。
そのため、一度「アレルギー」と診断されたら、ずっと除去を続けるわけではありません。
成長曲線で発育を確認しながら、検査結果やこれまでの症状を定期的に見直し、食べられるようになっていないかを検討します。
診断がついている食品の除去は守ってください
ここまで不要な除去を避けることを説明してきましたが、正しく診断された食物アレルギーの除去は別です。
食物アレルギー診療の原則は、「正しい診断に基づいた、必要最小限の除去」です。
逆に、これまで除去していた食品や、検査結果・症状からアレルギーが疑われている食品を、自宅で自己判断で少しずつ試すことも勧められません。
これまで食べたことのない量まで増やす場合には、必要に応じて医療機関で食物経口負荷試験を行います。
受診・検査のときに知っておきたいこと
受診前に記録しておくこと
食物アレルギーの診断では、検査値だけでなく、実際にどのようなことが起きたのかがとても重要です。
受診前に、何をどのくらい食べたか、生・加熱などどのような調理方法だったか、どんな症状が何分後に出たか、同じ食品で繰り返し症状が出ているか、などを整理しておくと診断の助けになります。
皮膚症状があった場合は写真を撮っておくと参考になります。加工食品の場合は、パッケージや原材料表示の写真も役立つことがあります。
検査結果は大切に保管してください
検査方法によって、単位や数値の意味が異なることがあります。
「卵がクラス3だった」といった記憶だけではなく、検査日・検査方法・具体的な数値が分かる結果票を保管し、受診時に持参してください。
保育所・幼稚園・学校に書類を提出するとき
食物アレルギーへの対応が必要な場合、保育所では「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」、幼稚園・学校では「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」などを用いて、医師から施設へ情報を伝えます。
生活管理指導表では、食物アレルギーの診断・除去の根拠として、明らかな症状の既往、食物経口負荷試験陽性、IgE抗体などの検査陽性、未摂取などを区別して記載します。
検査が陽性というだけでは、食物アレルギーの確定診断にはなりません。
また、最後に症状が出た時期や負荷試験を行った時期から長期間経過している場合には、すでに食べられるようになっている可能性もあります。
必要な除去を続けることと同時に、もう食べられるようになっていないかを定期的に見直すことも大切です。
まとめ―「何を調べるか」より「なぜ調べるか」
アレルギー検査は、とても役に立つ検査です。
しかし、「一度採血するなら、アレルギーも全部調べておこう」という使い方には注意が必要です。
大切なのは、検査項目の数ではありません。「何を疑っているのか」「検査結果によって、何を決めたいのか」を考えて検査することです。
迷ったときは、「アレルギー検査を受けたほうがいいですか?」だけでなく、「何に困っているのか」をぜひご相談ください。
食べた後、おおむね2時間以内に症状が出た、湿疹を適切に治療してもなかなか良くならない、検査で陽性と言われて自己判断で食べ物をやめている、除去が長く続いていて食べられるようになったか確認したい、といった場合は一度ご相談ください。
⚠️ 息が苦しそう、ぐったりしている、繰り返し吐くなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
参考文献
1. 日本小児アレルギー学会.『食物アレルギー診療ガイドライン2021』
2. 食物アレルギー研究会.『食物アレルギーの診療の手引き2023(2026年4月更新版)』
3. 日本アレルギー学会.「アレルギーに関するQ&A」
4. 日本アレルギー学会.「血中食物抗原特異的IgG抗体検査に関する注意喚起」
5. 日本小児アレルギー学会.「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」
6. Natsume O, et al. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017;389:276–286.
7. Komata T, et al. The predictive relationship of food-specific serum IgE concentrations to challenge outcomes for egg and milk varies by patient age. J Allergy Clin Immunol. 2007.
本記事は上記の診療ガイドライン・手引きなどを参考に作成しています。医学情報は今後のガイドライン改訂などにより変更される場合があります。