2026.09.21
アレルゲン免疫療法シリーズ第2回:舌下免疫療法とは?スギ・ダニの効果、副作用、何歳からできるか
「毎年、花粉症の時期になると薬が手放せない」
「ダニアレルギーによる鼻水や鼻づまりが一年中続いている」
このようなアレルギー性鼻炎に対して、症状が出たときに薬で抑えるだけでなく、原因となるアレルゲンに対する免疫反応そのものを変えていく治療が「アレルゲン免疫療法」です。
その方法のひとつが、舌下免疫療法(SLIT:Sublingual Immunotherapy)です。
第1回では、アレルゲン免疫療法の全体像について解説しました。今回は、現在日本で広く行われている舌下免疫療法について、効果や副作用、治療期間、何歳から受けられるのかなどを詳しくみていきます。
舌下免疫療法とは
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となるアレルゲンを含んだ薬を舌の下に投与し、毎日少しずつ体に取り入れることで、アレルゲンに対する免疫反応を変えていく治療です。
日本では現在、スギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法が行われています。
治療開始時などを除けば、自宅で毎日服用して治療を続けられることが大きな特徴です。
⚠️ 治療の対象になるかどうかは、血液検査の結果だけでは決まりません。症状が出る季節や場所、アレルゲンへの曝露などを確認し、スギやダニが実際に症状の原因になっているかを判断します。
臨床試験で確認されている効果
舌下免疫療法については、スギ・ダニともに多くの臨床試験が行われています。
スギ花粉症では、1,000人以上を対象とした国内臨床試験で、舌下免疫療法を行った人では、行わなかった人と比べて花粉飛散期の症状が軽くなり、必要な薬の量や生活の質(QOL)も改善することが確認されています。
ダニによるアレルギー性鼻炎についても、6,000人以上を含む複数のランダム化比較試験をまとめた解析で、鼻症状だけでなく、薬の使用量やQOLの改善が確認されています。
小児のエビデンスも蓄積されています。5~11歳の約1,500人を対象とした大規模な臨床試験では、症状と薬の使用量の両方が改善しました。
治療した全員が無症状になったり、まったく薬を使わなくてよくなったりするわけではなく、効果には個人差があります。それでも、症状を軽くし、必要な薬を減らす効果は、多くの質の高い臨床試験で確認されています。
効果を得るために必要な治療期間
舌下免疫療法は、抗ヒスタミン薬のように服用してすぐ症状を抑える治療ではありません。
スギ花粉症では、治療を続けることで効果が高まることが臨床試験で確認されています。数か月で終了するのではなく、長期的に治療を続けることが大切です。
📌 長期的な効果を期待する場合には、少なくとも3年間が重要な目安です。当院では3~5年間を一つの目安としています。
舌下免疫療法には、治療を終了した後にも効果が続く可能性があります。スギ花粉症では、3年間治療した臨床試験で治療終了後も2年間経過を追い、その間も効果が認められました。
数年間毎日続ける必要はありますが、治療終了後にも効果が続くことを期待できる点は、通常の症状を抑える薬との大きな違いです。
子どもの舌下免疫療法と開始年齢
舌下免疫療法は、成人だけでなく子どもにも行うことができます。
小児を対象とした臨床試験も行われており、5~11歳については大規模な臨床試験でも有効性と安全性が確認されています。5歳未満についても国内で研究が進められていますが、大規模な臨床試験によるエビデンスはまだ十分ではありません。
🏥 当院では、3歳以上を一つの目安として、安全に治療を続けられると判断した場合に舌下免疫療法を開始しています。
開始時には年齢だけでなく、薬を舌の下に保持できること、ご家族が毎日の服用を管理できること、副作用が起きたときに適切に対応できることなどを確認します。
数年間、安全に治療を続けられることが重要です。
治療開始から毎日の服用まで
治療を開始することが決まったら、最初の1回は医療機関で服用し、服用後に体調の変化がないか確認します。問題がなければ、その後は基本的に自宅で毎日服用を続けます。
スギ花粉の舌下免疫療法は、スギ花粉が飛散している時期には新しく治療を開始しません。治療を希望する場合には、花粉の飛散時期を考えて開始時期を決めます。
舌下免疫療法の副作用と安全性
舌下免疫療法では、口の中のかゆみや腫れ、のどの違和感などの副作用がみられることがあります。こうした症状は治療を始めた頃にみられることが多く、多くは軽度です。
日本で行われたスギ舌下免疫療法の市販後調査でも、副作用の多くは治療開始早期の局所症状でした。
一方、頻度は高くありませんが、全身性のアレルギー反応やアナフィラキシーが起こる可能性があります。初回は医療機関で服用し、その後も副作用への対応を理解したうえで治療を続けることが大切です。
⚠️ 服用後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴を避けてください。体温の上昇や血流の増加により、アナフィラキシーなどの副作用が起こりやすくなる可能性があるためです。これはスギ花粉症・ダニアレルギーいずれの舌下免疫療法でも共通の注意点です。
治療効果を支える「毎日の継続」
舌下免疫療法では、毎日数年間にわたって服用を続けます。
日本の子どもと保護者約5万人のデータでは、1年の75%以上の日数で薬が処方されていた人の割合は、治療1年目の75.6%から、3年目には53.9%まで低下していました。
自宅で服用できることは舌下免疫療法の利点ですが、数年間毎日続けるには工夫も必要です。
歯みがきや朝食など毎日の生活習慣と服用をセットにする、ご家族が声をかけるなど、無理なく生活の中に組み込むことが治療継続のポイントになります。特に子どもでは、本人だけに任せず、ご家族と一緒に続けられる方法を考えることが大切です。
スギとダニの両方を治療する場合
スギとダニの両方にアレルギーがあり、どちらも実際の症状に関係している場合には、両方の舌下免疫療法を行うこともできます。
国内では、まず一方の治療を開始し、その後スギとダニの2剤を併用する方法について安全性を検討した研究が行われています。
🏥 当院では、まず1種類を開始し、1か月以上問題なく続けられることを確認してから2種類目を追加しています。
治療するアレルゲンは検査結果だけで決めるのではなく、それぞれが実際の症状にどの程度関係しているかを考えて選択します。
服用を正しくできなかったときの対応
毎日続けていると、体調などによって服用を迷うことがあります。
飲み忘れた場合は、2回分をまとめて服用しません。飲み忘れが続いた場合などは、再開方法を医師に確認します。
発熱などで体調が悪いとき、喘息症状が強いとき、口内炎があるとき、抜歯などで口の中に傷があるときには、その日の服用について医師に相談した方がよい場合があります。
⚠️ 妊娠中に新しく舌下免疫療法を開始することは通常行いません。すでに治療を続けている方が妊娠した場合は、自己判断で中止せず主治医に相談してください。
舌下免疫療法を検討するタイミング
毎年スギ花粉症で困っている方、ダニによる鼻炎症状が一年を通して続いている方、薬を使えば症状は落ち着くものの毎年薬を使い続けることを減らしたい方、数年間かけても原因となるアレルゲンそのものに働きかける治療を希望する方にとって、舌下免疫療法は選択肢の一つです。
毎日の服用を数年間続ける必要があり、効果にも個人差があります。治療を始める際には、「舌下免疫療法をするかどうか」に加えて、「自分や子どもにとって数年間続ける価値のある治療か」という視点も大切です。
当院では、年齢や症状、生活スタイル、治療を続けられるかなども含めて、舌下免疫療法が適しているかを一緒に検討します。
🏥 次回は、「舌下免疫療法(SLIT)」と「皮下免疫療法(SCIT)」の違いについて、効果、安全性、治療方法、通院頻度、続けやすさなどを比較しながら解説します。
参考文献
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8. シダキュア スギ花粉舌下錠・ミティキュア ダニ舌下錠 添付文書・患者向け資材.鳥居薬品.