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スタッフコラム

2026.09.21

アレルゲン免疫療法シリーズ第3回:舌下免疫療法と皮下免疫療法の違い

アレルゲン免疫療法には、大きく分けて「舌下免疫療法(SLIT)」と「皮下免疫療法(SCIT)」の2つの方法があります。

第2回で詳しく解説した舌下免疫療法は、自宅で毎日薬を服用する治療です。一方、皮下免疫療法は、医療機関でアレルゲンを含む薬を皮下注射します。

どちらも原因となるアレルゲンを少量ずつ体に投与し、アレルゲンに対する免疫反応を変えていく治療ですが、治療方法や副作用、通院の仕方、治療できるアレルゲンなどに違いがあります。

今回は、舌下免疫療法と皮下免疫療法の特徴を比較しながら、治療を選ぶときのポイントを解説します。

舌下免疫療法と皮下免疫療法、2つの方法

まず、主な違いをまとめます。

舌下免疫療法(SLIT) 皮下免疫療法(SCIT)
治療方法 舌の下に薬を投与 皮下注射
導入期 開始1週間後に増量 週1回程度通院しながら段階的に増量
維持期 自宅で毎日服用 医療機関で定期的に注射
維持期の通院 当院では月1回 当院では月1回
毎日の治療 必要 不要
治療期間の目安 3〜5年 3〜5年
主な局所副作用 口・のど・耳などのかゆみや腫れ 注射部位の腫れ・かゆみ
全身性のアレルギー反応 SCITより少ない SLITより起こりやすい
国内で治療できる主なアレルゲン スギ・ダニ スギ・ダニ、その他も検討できる場合あり
当院での開始年齢の目安 3歳以上 6歳以上
成人3割負担の費用の目安 スギ:月2,000〜3,000円台
ダニ:月3,000円前後
スギ+ダニ:月4,000〜6,000円程度
導入期:月3,000〜5,000円程度
維持期:月700〜1,300円程度

※「維持期の通院」は舌下・皮下とも当院では月1回で同じです。通院頻度が異なるのは主に導入期で、詳しくは後述します。

※スギ・ダニ以外では、国内未承認の輸入治療用アレルゲンエキスを使用する場合があります。詳しくは第7回で解説します。

費用は3割負担の場合の概算です。診察回数、処方日数、検査、薬局の調剤料、使用するアレルゲンなどによって異なります。小児では自治体のこども医療費助成の対象となるため、実際の自己負担額はお住まいの地域によって異なります。

治療効果の違い

舌下免疫療法と皮下免疫療法は、どちらもアレルギー性鼻炎に対する有効性が確認されている治療です。国際的なガイドラインでも、いずれもアレルゲン免疫療法の選択肢として位置づけられています。

両者の効果については、比較のしかたによって異なる結果が報告されています。

ダニによるアレルギー性鼻炎について、複数の臨床試験を組み合わせて間接的に比較した解析では、舌下免疫療法・皮下免疫療法のいずれも症状や薬の使用量を改善し、症状の改善効果は皮下免疫療法のほうが大きい可能性が示されています。

⚠️ ただし、これは舌下免疫療法と皮下免疫療法を直接比較した試験ではなく、それぞれ別々に行われた臨床試験の結果を統計的に比較したものです。そのため、この差がどこまで確実といえるかには限界があります。

一方、小児のアレルギー性鼻炎を対象とした50研究、10,813人の系統的レビューでは、このうち6研究で舌下免疫療法と皮下免疫療法が直接比較されていました。これらの直接比較では、症状や薬の使用量に明確な差は認められませんでした。

間接比較では皮下免疫療法のほうが大きな効果を示す可能性がある一方、直接比較では明確な差は確認されていません。現時点では、「皮下免疫療法のほうが常によく効く」とまではいえません。治療法を選ぶ際には、効果だけでなく、安全性や治療方法、数年間続けられるかまで含めて考える必要があります。

副作用と安全性の違い

舌下免疫療法と皮下免疫療法では、副作用の現れ方にも違いがあります。

舌下免疫療法では、口の中やのどのかゆみ、腫れ、耳の奥のかゆみなどがみられることがあります。治療開始直後に多く、多くは軽度ですが、症状が強い場合には治療を続けにくくなることもあります。

皮下免疫療法では、注射した部分の赤み、腫れ、かゆみなどの局所反応がみられます。

どちらの治療でも全身性のアレルギー反応やアナフィラキシーが起こる可能性がありますが、そのリスクは皮下免疫療法のほうが高いことが知られています。そのため皮下免疫療法は医療機関で注射し、投与後も体調に変化がないか確認します。

小児を対象とした系統的レビューでも、治療に関連した有害事象は皮下免疫療法より舌下免疫療法で少ないことが報告されています。

⚠️ 舌下免疫療法でもアナフィラキシーが起こる可能性はあります。初回は医療機関で服用し、副作用への対応を理解したうえで自宅での治療を続けます。

安全性だけを比較すれば舌下免疫療法に利点がありますが、局所症状の種類や治療を受ける場所も異なるため、実際に負担に感じる点は患者さんによって異なります。

治療方法と通院頻度の違い

舌下免疫療法と皮下免疫療法で大きく異なるのが、治療を生活の中でどのように続けるかです。

舌下免疫療法は、治療開始後1週間で維持量に増量し、その後は自宅で毎日服用します。当院では服用後の反応に問題がなければ、その後の通院は基本的に月1回です。

皮下免疫療法は、少ない量から治療を開始し、注射量を段階的に増やしていきます。導入期には週1回程度の頻度で通院する必要がありますが、維持量に到達した後は通院間隔を延ばし、当院では月1回の注射で治療を続けます。

つまり、維持期に入れば当院での通院頻度はどちらも月1回程度です。

大きな違いは、舌下免疫療法では通院のない日も毎日自宅で服用するのに対し、皮下免疫療法では維持期に入ると毎日の治療はなく、定期的な注射で治療を続けることです。

「毎日自宅で服用するほうが続けやすい」という方もいれば、「毎日の服用より、月1回の注射のほうが続けやすい」という方もいます。

皮下免疫療法では導入期に頻回の通院が必要になるため、この期間の通院が可能かどうかも治療を選ぶ際のポイントになります。

治療にかかる費用

治療方法が異なるため、費用のかかり方にも違いがあります。

3割負担の場合、維持期の舌下免疫療法は、スギ単独で月2,000〜3,000円台、ダニ単独で月3,000円前後、スギとダニの両方を治療する場合には月4,000〜6,000円程度が目安です。

皮下免疫療法では、導入期は週1回程度の通院が必要になるため月3,000〜5,000円程度、維持期に入って月1回の注射になると月700〜1,300円程度が目安です。

維持期に限れば、皮下免疫療法は毎日薬を使用する舌下免疫療法より費用が低くなる場合があります。

実際の自己負担額は、診察回数、処方日数、検査、薬局の調剤料、複数のアレルゲンを治療するかなどによって変わります。

小児では、舌下免疫療法・皮下免疫療法ともに自治体のこども医療費助成の対象となるため、実際の窓口負担はお住まいの地域によって異なります。

治療できるアレルゲンの違い

日本で行われている舌下免疫療法は、現在、スギ花粉症とダニによるアレルギー性鼻炎が対象です。

皮下免疫療法では、国内にスギとダニの治療用アレルゲンエキスがあります。

ダニに対する皮下免疫療法にはもう一つ特徴があります。日本では、ダニによるアレルギー性鼻炎だけでなく、気管支喘息に対しても承認されています。

また、皮下免疫療法ではスギやダニ以外のアレルゲンについても、国内未承認の輸入治療用アレルゲンエキスを用いて治療を検討できる場合があります。

⚠️ どのアレルゲンまで治療対象とするかは、血液検査や皮膚テストの結果だけでは決まりません。実際の症状、アレルゲンへの曝露、除去や回避が可能かなどを確認し、症状の原因として重要なアレルゲンを選ぶ必要があります。

当院で行っている皮下免疫療法の具体的な治療方法や、スギ・ダニ以外のアレルゲンに対する治療については、このシリーズの第7回で詳しく解説します。

子どもではどちらを選ぶか

子どものアレルギー性鼻炎についても、舌下免疫療法・皮下免疫療法の両方に有効性を示す研究があります。

🏥 当院では、舌下免疫療法は3歳以上を一つの目安として、安全に治療を続けられると判断した場合に開始しています。

皮下免疫療法は注射による治療です。当院では6歳以上を一つの目安とし、年齢だけでなく、本人が注射による治療であることを理解し、受け入れられることを重視しています。

小児では安全性の面から舌下免疫療法を選びやすい場合がありますが、年齢だけで治療法が決まるわけではありません。

毎日の舌下免疫療法を続けることが難しい、口やのど、耳のかゆみなどがつらく継続しにくい、といった理由から皮下免疫療法を選択することもあります。

反対に、注射が苦手な場合や、皮下免疫療法の導入期における頻回通院が難しい場合には、舌下免疫療法のほうが続けやすいことがあります。

自分に合った治療を数年間続ける

舌下免疫療法と皮下免疫療法は、「どちらが優れた治療か」という関係ではありません。それぞれの特徴を理解し、治療するアレルゲンや安全性、生活スタイルなどを考えて選択します。どちらを選んでも、長期的な効果を得るためには数年間治療を続けることが前提になります。

🏥 当院では、舌下免疫療法・皮下免疫療法の両方を行っています。症状や生活スタイル、ご希望をうかがいながら、無理なく続けられる方法を一緒に検討します。


次回は、アレルゲン免疫療法が「アレルギー性鼻炎・花粉症」にどのような効果をもたらすのか、スギ花粉症やダニアレルギーを中心に詳しく解説します。


参考文献

1. Roberts G, Pfaar O, Akdis CA, et al. EAACI Guidelines on Allergen Immunotherapy: Allergic rhinoconjunctivitis. Allergy. 2018;73:765-798.

2. Kim JY, Jang MJ, Kim DY, Park SW, Han DH. Efficacy of Subcutaneous and Sublingual Immunotherapy for House Dust Mite Allergy: A Network Meta-Analysis-Based Comparison. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021;9:4450-4458.e6.

3. Yang J, Lei S. Efficacy and safety of sublingual versus subcutaneous immunotherapy in children with allergic rhinitis: a systematic review and meta-analysis. Front Immunol. 2023;14:1274241.

4. Gurgel RK, Baroody FM, Damask CC, et al. Clinical Practice Guideline: Immunotherapy for Inhalant Allergy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2024;170(Suppl 1):S1-S42.

5. 治療用標準化アレルゲンエキス皮下注「トリイ」スギ花粉 添付文書.鳥居薬品株式会社.

6. 治療用ダニアレルゲンエキス皮下注「トリイ」添付文書.鳥居薬品株式会社.

福岡市・薬院の小児科・アレルギー科・内科

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