公開日:2026.11.03
乳幼児の栄養シリーズ:赤ちゃんにビタミンDは必要?――母乳・ミルク、日光浴、サプリメントを考える
「赤ちゃんには日光浴をさせた方がいいのでしょうか?」
「日焼け止めを使うと、ビタミンDが不足しませんか?」
ビタミンDは、赤ちゃんの骨の成長に欠かせない栄養素です。食事からとるほか、日光に含まれる紫外線によって皮膚でもつくられます。
ところが、母乳に含まれるビタミンDは少なく、日焼けを心配して外に出る機会を控える家庭もあります。日本でも乳児のビタミンD欠乏が増えていることから、2025年3月に日本小児医療保健協議会栄養委員会が「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」を公表しました。
この記事では、1歳までの赤ちゃんを対象に、次の3つを日本と海外の推奨を比べながら説明します。
・母乳・育児用ミルク・離乳食からとれる量
・日光浴と日焼け止め
・サプリメントの考え方
1歳以降、特に学童期のビタミンDについては、「子どものサプリメントシリーズ:ビタミンD――日光・食事・サプリメントをどう考える?」で取り上げています。
📋 まず結論
・母乳に含まれるビタミンDは少なく、母乳が中心の赤ちゃんは不足しやすくなります。ただし、母乳育児をやめる必要はありません。
・日光でつくられる量は、季節や地域で大きく変わります。赤ちゃんに必要な日光浴の時間に、「1日何分」という決まった目安はありません。
・米国などでは、母乳で育つ赤ちゃんに1日10 μg(400 IU)の補充を推奨しています。日本でも、生活や食事で補うのが難しい場合はサプリメントを考えます。
・母乳が中心で外に出る機会が少ない場合は、小児科でご相談ください。
1.ビタミンDは赤ちゃんにとってなぜ必要?
ビタミンDは、腸からカルシウムやリンを吸収するのを助け、骨の成長を支えています。
乳児期は、骨が急速に成長する時期です。ビタミンDが強く不足すると、骨が十分に硬くならないビタミンD欠乏性くる病を起こすことがあります。血液中のカルシウムが下がって、けいれんで見つかる場合もあります。
国内の全国調査では、症状を伴うビタミンD欠乏の多くが5歳未満の乳幼児でした。
ビタミンDは免疫の働きにも関わっており、アレルギーとの関係も研究されています。これについては8章で説明します。
2.赤ちゃんには1日どのくらいのビタミンDが必要?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、乳児の目安量は次のとおりです。
| 年齢 | 1日の目安量 |
|---|---|
| 0〜5か月 | 5.0 μg(200 IU) |
| 6〜11か月 | 5.0 μg(200 IU) |
※1 μg=40 IUで換算できます。
一方、米国では、1歳未満の目安を10 μg(400 IU)としています。
日本の5.0 μgは、0〜5か月児ではくる病を防ぐための量、6〜11か月児では適度に日光を浴びる環境を前提にした量です。米国の10 μgは、日光をほとんど浴びない前提で、血液中のビタミンD濃度を保つための量として決められています。前提が違うため、日本では米国の半分で足りる、とは考えられません。
3.母乳・ミルク・離乳食からどのくらいとれる?
母乳
母乳は赤ちゃんに最適な栄養ですが、ビタミンDは少ししか含まれていません。日本食品標準成分表では、母乳100 gあたり0.3 μgです。生後0〜5か月の赤ちゃんが1日に飲む量の目安(約780 mL)で計算しても、約2 μgにとどまります。実際の含有量は、お母さんのビタミンDの状態や季節によっても変わります。
静岡と東京の健康な乳幼児を調べた研究があります。生後0〜5か月の赤ちゃんの52%で、血液中のビタミンD(25(OH)D)が20 ng/mL以下でした。内訳は、12 ng/mL未満の「欠乏」が34%、12〜20 ng/mLの「不足」が18%です。母乳で育つ赤ちゃんでは半数が欠乏に当てはまり、ミルクや混合栄養の赤ちゃん(約1割)より多くみられました。これは血液検査の値に基づく結果で、この研究でくる病と診断された赤ちゃんはいませんでした。
大切なのは、母乳育児を続けながら、ビタミンDの不足を防ぐことです。
育児用ミルク
育児用ミルクには、ビタミンDが加えられています。国内の製品では、調乳後100 mLあたり1 μg前後です(含有量は製品の表示で確認できます)。
100 mLあたり1.0 μgとして計算すると、次のようになります。
| 1日の哺乳量 | ビタミンDの量 |
|---|---|
| 600 mL | 約6 μg(240 IU) |
| 800 mL | 約8 μg(320 IU) |
| 1,000 mL | 約10 μg(400 IU) |
ミルクを十分な量飲んでいる赤ちゃんは、母乳だけの赤ちゃんよりビタミンDを確保しやすくなります。混合栄養では、母乳とミルクの割合によって量が変わります。ビタミンDのために、ミルクの量を無理に増やす必要はありません。
離乳食
離乳食が進むと、魚や卵黄、きのこからもビタミンDをとれるようになります。ただし、食品によって含有量は大きく違います。
| 食品 | 100 gあたり | 食べる量の例 | 例に含まれる量 |
|---|---|---|---|
| 鮭(しろさけ・焼き) | 39.0 μg | 10 g | 約3.9 μg |
| 卵黄(ゆで) | 7.1 μg | 5 g | 約0.4 μg |
| まいたけ(ゆで) | 5.9 μg | 10 g | 約0.6 μg |
| 釜揚げしらす | 4.2 μg | 5 g | 約0.2 μg |
| 鶏ささみ(ゆで) | ほぼ0 μg | 10 g | ほぼ0 μg |
※日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の調理後の値です(釜揚げしらすは、ゆでた状態で売られている食品の値)。食べる量の例は比べるためのもので、月齢ごとの推奨量ではありません。
鮭は、少量でもビタミンDをとりやすい食品です。卵黄は、固ゆでの卵黄1個(約17 g)で約1.2 μgです。ビタミンDのために卵を急いで進める必要はなく、月齢やアレルギーのリスクに合わせて進めましょう。しらすは塩分が多いため、塩抜きをして使います。
食べられる量が少ない時期は、特定の食品を無理に増やすより、成長に合わせていろいろな食品を取り入れていきます。
4.どんな赤ちゃんがビタミンD不足になりやすい?
次のような場合は、不足しやすくなります。
・母乳が中心で、ビタミンDの補充をしていない
・外に出る機会がとても少ない
・冬など、日光からつくられる量が少ない時期・地域で過ごしている
・離乳食の開始が遅れている、または食べられる食品が限られている
・食物アレルギーで、魚や卵を除去している
・早産・低出生体重で生まれた、または脂肪の吸収が悪くなる病気(胆汁うっ滞など)がある
妊娠中のお母さんのビタミンDの状態も、生まれたときの赤ちゃんのビタミンDに影響します。
当てはまる項目が重なるほど、不足しやすくなります。ただ、当てはまっても必ず不足しているわけではありません。栄養の方法、生活環境、成長の様子を合わせて考えます。
5.日光浴は必要?――時間の目安と日焼け止め
ビタミンDは、日光に含まれる紫外線B波(UVB)が皮膚に当たることでつくられます。
必要な時間は、季節と地域で大きく変わる
国立環境研究所などの研究チームは、顔と両手を出した大人を想定して推計しています。対象は、当時の大人の1日の目安量(5.5 μg)を日光だけでつくるのに必要な時間です。
| 地域 | 7月・正午 | 12月・正午 |
|---|---|---|
| 札幌 | 約5分 | 約76分 |
| つくば | 約4分 | 約22分 |
| 那覇 | 約3分 | 約8分 |
夏は短い時間でつくられますが、冬は地域によってかなり長い時間が必要です。この数字は、晴れた日の正午に大人が浴びた場合の計算値で、赤ちゃんに勧める日光浴の時間ではありません。
UVBは一般的な窓ガラスをほとんど通さないため、室内で窓越しに日光を浴びても、ビタミンDはつくられません。屋外の日陰でも少しはつくられますが、量はわかっていません。
赤ちゃんの外気浴の考え方
米国小児科学会は、生後6か月未満の赤ちゃんは直射日光を避け、日陰や衣服、帽子で守ることを推奨しています。
日本の提言は、適度な外気浴や外遊びを行い、紫外線対策のために過度に日焼け止めを使わないことを挙げています。
赤ちゃんに必要なビタミンDを確実につくれる日光浴の時間や回数は、わかっていません。気候や体調に合わせて、無理のない範囲で散歩や外気浴を取り入れてください。暑い時期は、日焼けと熱中症を防ぐことを優先します。
日焼け止めとビタミンD
日焼け止めを塗ると、皮膚でつくられるビタミンDは減ります。日常の使い方での影響は、これまで小さいと考えられてきました。
オーストラリアで2025年に報告されたSun-D試験では、大人639人を2つの群に分け、約1年間比べました。紫外線が強い日に毎日SPF50+の日焼け止めを塗る群と、普段どおりの群です。最後の時点でビタミンD欠乏だった人は、毎日塗った群で46%、普段どおりの群で37%でした。研究者は、日焼け止めをやめるのではなく、毎日使う人はサプリメントを考えるよう勧めています。
この研究は大人が対象で、赤ちゃんでも同じ影響があるかはわかっていません。もともと外に出る機会が少なく、衣服で肌を覆っている赤ちゃんでは、日焼け止めを加えても影響は小さいと考えられます。
日焼け止めは何か月から?
| 月齢 | 考え方 |
|---|---|
| 生後6か月未満 | 日陰・衣服・帽子で守ることを優先する。避けられないときは、肌が出ている狭い範囲に日焼け止めを使う |
| 生後6か月以降 | 外で過ごす時間に応じて、日陰・衣服と組み合わせて日焼け止めを使う |
ビタミンDのために、強い日差しの中で日焼け止めを使わずに過ごすことはお勧めしません。紫外線対策をしっかり行う家庭ほど、食事やサプリメントでビタミンDを補うことを考えます。
6.ビタミンDが不足するとどうなる? 検査と治療
軽い不足では、症状がないことがほとんどです。強い欠乏が続くと、くる病による骨の変形(O脚など)や、成長・運動発達の遅れが見られることがあります。低カルシウム血症によるけいれんで見つかることもあります。
欠乏が疑われる場合は、血液検査で25(OH)D、カルシウム、リン、ALP、副甲状腺ホルモン(PTH)などを調べます。必要に応じて、骨のX線検査も行います。
25(OH)Dを保険診療で測定できるのは、くる病などの診断や治療に必要な場合です。症状のない赤ちゃん全員に、確認のための血液検査をする必要はありません。
欠乏症と診断された場合、日本では処方できる天然型のビタミンD製剤がないため、活性型のビタミンD製剤で治療します。あわせて、外気浴や離乳食の進め方を見直し、体のビタミンDを満たしていきます。
7.サプリメントは必要?――日本と海外の推奨
海外の推奨
米国小児科学会は、母乳だけ、または母乳とミルクの混合で育つ赤ちゃんに、生後数日から1日10 μg(400 IU)の補充を推奨しています。米国疾病予防管理センター(CDC)は、ミルクが1日約950 mL未満の赤ちゃんには補充が必要と説明しています。
くる病の予防に関する国際的なガイドラインは、栄養の方法にかかわらず、1歳までのすべての赤ちゃんに補充を推奨しています。
日本の提言
日本の提言は、次の4点を挙げています。
・母乳育児を妨げないこと
・適度な外気浴
・離乳食を遅らせずに始めること
・カルシウムも含めた食事
そのうえで、生活や食事の改善が難しい場合は、乳児用の天然型ビタミンDサプリメントを考えるとしています。さらに、海外のように全員に補充する方法について、日本でも議論が必要だと課題に挙げています。
🏥 当院では、母乳が中心のお子さんには、ビタミンDのサプリメントをご案内しています。健診や予防接種の際にもご相談ください。1歳近くまで母乳が中心で離乳食が進まず、体重が少ない、または体重の増え方がゆるやかな場合には、血液検査(25(OH)D)を検討します。
とりすぎにも注意
ビタミンDは脂溶性のビタミンで、体にたまりやすい性質があります。過剰な量を続けると、高カルシウム血症などを起こすことがあります。食事摂取基準(2025年版)では、1歳未満の耐容上限量を1日25 μg(1,000 IU)としています。これは、この量まで飲ませてよいという目安ではありません。
⚠️ 大人向けの製品は、1粒に含まれる量が多いことがあります。赤ちゃんには乳児用の製品を使い、1滴あたりの量と使い方を確認してください。複数のサプリメントを重ねて使わないようにします。(→総論「子どもにサプリメント、飲ませる前に知っておきたいこと」)
8.ビタミンDとアレルギーは関係する?
ビタミンDは免疫の働きに関わるため、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎との関係が研究されています。血液中のビタミンDが低い子どもにアレルギーが多いという報告はあります。ただ、それだけでは、ビタミンD不足が原因かどうかは判断できません。
千葉大学の研究グループは、日本の赤ちゃんにビタミンDを飲ませて、食物アレルギーを防げるかを調べるランダム化比較試験(D-PAC研究)を行っています。研究グループ自身の2025年の総説では、高い予防効果が得られたと報告されています。ただし、2026年11月時点で、詳しい結果は論文として公表されていません。海外の研究では、効果があったものとなかったものがあり、結果は一致していません。
アレルギーの予防や治療を目的としたビタミンDのサプリメントの効果は、現時点でははっきりしていません。湿疹の治療も、スキンケアと塗り薬が基本です。
9.まとめ
母乳に含まれるビタミンDは少なく、日本でも乳児のビタミンD欠乏が増えています。母乳育児をやめる必要はありません。ミルク、離乳食、外気浴に加えて、必要に応じてサプリメントで補います。
日光でつくられる量は季節や地域で大きく変わり、赤ちゃんに強い日差しを浴びせる必要はありません。紫外線を過度に避けず、必要な紫外線対策はしたうえで、足りない分は食事やサプリメントで補う。この考え方で、骨の健康と肌の健康を両立できます。
1歳を過ぎても母乳が中心で食事が進まない場合や、魚・卵を除去している場合は、引き続き不足に注意が必要です。気になることがあれば、小児科でご相談ください。
このシリーズのほかの記事は、「離乳食はいつから?――5〜6か月を目安に、赤ちゃんの準備を見て始める」の一覧からご覧いただけます。
参考文献
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※2026年11月2日時点の情報に基づいています。