公開日:2026.11.04
乳幼児の栄養シリーズ:赤ちゃんの鉄不足、どう防ぐ?――離乳食での鉄のとり方、血液検査と治療
「離乳食をあまり食べないので、貧血にならないか心配です」
赤ちゃんの鉄について、外来でよくいただく質問です。
この記事では、赤ちゃんの時期から1〜2歳頃までを対象に、鉄が足りなくなりやすい時期、離乳食での鉄のとり方、血液検査を考えるとき、鉄不足が見つかったときの治療について説明します。学童期以降の鉄については、「鉄・亜鉛・カルシウム――不足しやすいのはどんな子?」で取り上げています。
📋 まず結論
・正期産で生まれた赤ちゃんは、生後4か月頃までは生まれたときの鉄の蓄えで足ります。母乳が中心の場合、離乳食の時期から不足しやすくなります。
・離乳食を始めたら、卵黄、豆腐、魚、肉など、鉄を含む食品を早めに取り入れます。
・日本では、予防のために鉄剤を飲ませることは一般的ではありません。母乳が主な栄養の9〜12か月頃など、鉄不足が気になる場合は、食事と成長を確認し、必要に応じて血液検査を行います。
・鉄不足が見つかった場合は、多くは鉄剤で治療します。食事の見直しだけでは、なかなか改善しないためです。
1.赤ちゃんの鉄は、いつ足りなくなりやすい?
赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にいる間、特に妊娠の後半に、鉄を体にためて生まれてきます。正期産で生まれた健康な赤ちゃんは、この蓄えで生後4か月頃までは鉄が足ります。
その後は体が大きくなり、血液の量も増えるので、鉄の必要量が増えます。母乳の鉄は吸収されやすいものの、含まれる量はわずかです。母乳が中心の赤ちゃんでは、生後6か月の時点でヘモグロビンが低く、鉄が不足しやすいという報告があります。離乳食から鉄をとれないと、蓄えはさらに減っていきます。
次のような場合は、鉄が不足しやすくなります。
・早産で生まれた、または生まれたときの体重が小さめだった
・母乳が中心で、離乳食の量が少ない状態が続いている
・肉や魚など、鉄を含む食品をほとんど食べない
・食物アレルギーなどで、食べられる食品が限られている
・1歳以降、牛乳を多く飲み、そのために食事量が減っている
・体重の増え方がゆるやか
鉄が足りないと、どうなる?
鉄が足りなくなると、まず体の蓄えが減り、その後に血液のヘモグロビンが下がって貧血になります。
貧血が進むと、顔色が悪い、機嫌が悪い、食欲が落ちる、疲れやすいといった様子がみられることがあります。赤ちゃんでは気づきにくく、はっきりした症状がないことも少なくありません。
鉄は、脳の発達にも関わる栄養素です。貧血になる前の鉄不足でも、発達に影響する可能性が指摘されています。
2.離乳食で鉄をとる
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、鉄の推奨量は次のとおりです。
| 年齢 | 鉄の推奨量 |
|---|---|
| 6〜11か月 | 4.5 mg/日 |
| 1〜2歳 | 4.0 mg/日 |
これは母乳・ミルク・離乳食を合わせた1日の目安で、この量に届かなければ鉄不足になる、という意味ではありません。育児用ミルクを飲んでいる赤ちゃんは、ミルクからも鉄をとれます。母乳が中心の赤ちゃんでは、離乳食からとる鉄がより重要です。
離乳食に含まれる鉄
食品成分表の「100 g当たり」の量だけでは、赤ちゃんが実際にとれる鉄の量はわかりません。そこで、離乳食で食べる量に換算しました。
| 食品 | 鉄/100 g | 量の例 | その量の鉄 |
|---|---|---|---|
| 豚レバー(生) | 13.0 mg | 加熱前5 g | 約0.65 mg |
| 鶏レバー(生) | 9.0 mg | 加熱前5 g | 約0.45 mg |
| 牛もも赤身肉(輸入牛・ゆで) | 3.5 mg | 加熱後15 g | 約0.53 mg |
| かつお(なまり節) | 5.0 mg | 15 g | 約0.75 mg |
| 卵黄(ゆで) | 4.7 mg | 10 g | 約0.47 mg |
| 小松菜(ゆで) | 2.1 mg | 20 g | 約0.42 mg |
| ほうれん草(ゆで) | 0.9 mg | 20 g | 約0.18 mg |
| 絹ごし豆腐 | 1.2 mg | 40 g | 約0.48 mg |
※日本食品標準成分表に基づく概算です。レバーは加熱前、牛肉・野菜・卵黄は加熱後の重量です。食品の種類、部位、調理方法によって値は異なります。例示量は推奨する量ではありません。
レバーは鉄が非常に豊富ですが、ビタミンA(レチノール)も多く含みます。鉄を補う目的で、毎日たくさん食べさせることは勧められません。
ほうれん草は鉄が多いイメージがありますが、ゆでたもの20 gで約0.18 mgです。野菜だけで鉄を補うのは難しいので、肉や魚、卵黄、大豆製品を組み合わせます。レバーなどを使ったベビーフードや、鉄を強化した食品も、必要に応じて使えます。
鉄は、食品によって吸収されやすさが違う
肉や魚に含まれるヘム鉄は、比較的吸収されやすい鉄です。野菜、豆類、卵、鉄強化食品に含まれる非ヘム鉄は、一緒に食べるものによって吸収率が変わり、ビタミンCを含む野菜や果物と組み合わせると吸収されやすくなります。なお、肉や魚の鉄がすべてヘム鉄というわけではありません。
鉄を含む食品は、早めに
離乳食を始めたら、おかゆや野菜とあわせて、卵黄、豆腐、魚、肉なども取り入れていきます。白米のおかゆは、鉄の供給源にはなりません。おかゆと野菜ばかりが進み、たんぱく質の食品が後回しにならないようにします。(→「離乳食は10倍粥から始める必要がある?――日本と海外の指針から考える」、「離乳食の卵は、卵黄と卵白どちらから?――卵黄から始める理由とアレルギー予防」)
授乳・離乳の支援ガイドでは、鉄欠乏性貧血を防ぐ観点から、牛乳を飲み物として与えるのは1歳を過ぎてからが望ましいとしています。牛乳には鉄がほとんど含まれず、たくさん飲むと食事の量が減って、鉄不足の原因になります。フォローアップミルクについては、「フォローアップミルクは必要?――9か月で切り替える?離乳食を食べないときは?」で詳しく説明しています。
3.鉄剤で予防する必要はある?
健康な正期産の赤ちゃんに、予防のために鉄を補充するかどうかは、国や学会によって考え方が分かれています。
米国小児科学会(AAP)は2026年の臨床報告で、完全母乳で育つ正期産の赤ちゃんに、生後4か月までに鉄の補充(体重1 kgあたり1日1 mg)を始めることを推奨しています。一方で、鉄を含む離乳食を始める6か月まで待つ選択肢も示しています。
欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)は、出生体重が正常な健康な乳幼児に、一律に鉄を補充することを支持する根拠は不十分だとしています。そのうえで、生後6か月からは、肉や鉄強化食品などの鉄を含む食品をとるよう勧めています。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」も、貧血の治療などを除き、推奨量を大きく超える鉄の補給は控えるべきとしています。
予防のために鉄を補充すると貧血は減りますが、その後の発達がよくなるかは、はっきりしていません。
日本では、鉄剤は鉄欠乏性貧血の治療薬で、鉄が足りている子どもに予防のために使うことはできません。国内で乳児向けとして販売されている鉄のサプリメントも、ほとんど見当たりません。
🏥 当院では、鉄を含む食品を離乳食に取り入れることを大切にし、不足が心配な場合は検査で確かめるようにしています。
早産や低出生体重で生まれた赤ちゃんは、生まれたときの鉄の蓄えが少ないため、早い時期から鉄剤を使うことがあります。NICUや産院から指示がある場合は、その指示に従ってください。
4.血液検査はどんなときに?
鉄が足りているかは、見た目や食事の内容だけでは判断できません。1章のような鉄が不足しやすい条件がある場合や、顔色が悪い、体重の増え方がゆるやかといった場合には、血液検査を考えます。
検査では、ヘモグロビン(貧血があるか)に加えて、フェリチン(体の鉄の蓄えを反映する値)を調べます。ヘモグロビンだけでは、貧血になる前の鉄不足を見つけられないためです。AAPの2026年の報告では、子どもではフェリチンが20 ng/mL以下を鉄欠乏としています。鉄欠乏とする値は、学会や機関によって異なります。
フェリチンは、かぜなどで体に炎症があると高く出ます。熱があるときやかぜをひいた直後は、鉄が足りなくても正常に見えることがあるため、結果は炎症の有無と合わせて判断します。
AAPはすべての乳幼児に血液検査を勧めており、母乳が主な場合は9〜12か月頃、育児用ミルクが主な場合は牛乳に切り替えた後の1歳3か月〜1歳半頃を検査の時期としています。日本では、全員に血液検査を行うことは一般的ではありません。
🏥 母乳が主な栄養の9〜12か月頃は、鉄が不足しやすい時期です。気になる場合はご相談ください。当院では、食事の内容と成長を確認し、必要に応じて血液検査を行います。
5.鉄不足が見つかったら
鉄不足が見つかったら、食事の見直しとあわせて、鉄剤で治療します。いったん蓄えが減ってしまうと、食事だけで補うのは難しいためです。
貧血がなく、フェリチンだけが低い場合も、鉄剤での治療をお勧めすることが多いです。お子さんの様子や食事の状況を踏まえて、保護者の方と相談して決めます。
当院では、乳幼児には主にシロップの鉄剤を使います。飲ませる量と回数は、医師の指示どおりにしてください。
鉄剤を飲んでいる間は、次のようなことがあります。
・便が黒っぽくなる(鉄剤によるもので、心配はいりません)
・便秘や下痢など、おなかの調子が変わる
液体の鉄剤では、歯や舌に一時的に色がつくことがあります。飲んだ後は歯をみがくか、水を飲ませてください。
鉄剤は、3か月ほどを目安に続け、体の鉄の蓄えを補います。貧血の程度によっては、治療を始めて1か月ほどで、血液検査で効果を確認します。治療の終わりにも血液検査を行い、蓄えがまだ足りなければ延長します。鉄が足りている状態になれば、数値をさらに上げるために飲み続ける必要はありません。治療中も、離乳食で鉄を含む食品をとるようにします。
⚠️ 大人用の鉄剤やサプリメントを子どもが誤って飲むと、少ない量でも中毒を起こすことがあります。子どもの手の届かない場所に保管し、誤って飲んだ場合はすぐに受診してください。
6.まとめ
赤ちゃんの鉄は、生まれたときの蓄えで生後4か月頃までは足ります。その後、母乳が中心の場合は、離乳食からとる鉄が欠かせません。離乳食を始めたら、鉄を含む食品を早めに取り入れましょう。
母乳が主な栄養の9〜12か月頃や、鉄を含む食品をあまり食べない場合、体重の増え方が気になる場合はご相談ください。必要に応じて血液検査を行い、鉄が不足していれば鉄剤で治療します。
このシリーズのほかの記事は、「離乳食はいつから?――5〜6か月を目安に、赤ちゃんの準備を見て始める」の一覧からご覧いただけます。
参考文献
1. 厚生労働省.授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版).2019年3月(2026年11月4日閲覧).
2. 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書.2024年10月(2026年11月4日閲覧).
3. 文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年.2023(2026年11月4日閲覧).
4. Powers JM, Heeney MM, Hord J, Lehmann CU, Abrams SA, Buchanan GR; AAP Section on Hematology-Oncology, AAP Committee on Nutrition, American Society of Pediatric Hematology-Oncology. Prevention, Screening, Diagnosis, and Treatment of Iron Deficiency and Iron Deficiency Anemia in Infants, Children, and Adolescents: Clinical Report. Pediatrics. 2026;158(1):e2026077414.
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6. Pasricha SR, Hasan MI, Braat S, et al. Benefits and Risks of Iron Interventions in Infants in Rural Bangladesh. N Engl J Med. 2021;385(11):982-995.
7. インクレミンシロップ5% 電子添文(2023年7月改訂 第1版)(2026年11月4日閲覧).
※2026年11月4日時点の情報に基づいています。