2026.09.27
子どものサプリメントシリーズ:食物アレルギーで除去している子どもの栄養
「牛乳を飲めないけれど、カルシウムは足りている?」
「卵を食べられないと、栄養が不足しない?」
「いくつも除去していて、成長に影響しないか心配」
食物アレルギーのあるお子さんの保護者から、こうした相談を受けます。
食物アレルギーでは、症状を起こす食品を安全に避ける必要があります。同時に、成長期の子どもでは、除去を必要以上に広げないことが栄養を守ることにもつながります。この記事では、本当に必要な除去の範囲を確認し、食べられる食品をできるだけ広く保ちながら、食事全体で不足がないかを考える、という順序で見ていきます。
対象は、離乳食が進み、食事が栄養の中心になった子どもです。乳児期の母乳・ミルクや離乳食、アレルギー予防のための食品の取り入れ方は、「乳幼児の栄養」シリーズで取り上げる予定です。
基本は「必要最小限の除去」
食物アレルギーの食事管理の原則は、正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去です。「必要最小限」には、2つの意味があります。
・原因ではない食品まで除去しないこと
・原因食品であっても、食べられる範囲まで一律に除去しないこと
血液検査や皮膚テストで陽性になっても、それだけで食べると症状が出るとは限りません。これまでに食べたときの症状や検査結果、必要に応じて食物経口負荷試験を組み合わせて診断します。負荷試験などで安全に食べられる量が確認できれば、医師の指導のもとで、その範囲を食生活に取り入れていきます。
除去しなくてよいことが多い食品
原因食物と名前が似ていたり、同じ原料からつくられていたりしても、多くの場合は除去しなくてよい食品があります。
📌 多くの場合、除去しなくてよい食品
・鶏卵アレルギー:鶏肉、魚卵
・牛乳アレルギー:牛肉
・小麦アレルギー:しょうゆ、穀物酢(麦茶も、除去が必要なことはまれです)
・大豆アレルギー:しょうゆ、みそ、大豆油
・魚アレルギー:かつおやいりこのだし
これらを食べられるだけで、料理の幅はかなり広がります。ただし、症状の強さによっては例外もあるので、主治医に確認してください。
除去で食事から何が抜けたかを見る
栄養への影響は、除去する食品によって大きく異なります。
牛乳を毎日飲んでいた子が乳製品をすべて除去すれば、カルシウムの摂取量は大きく減ります。一方、ピーナッツだけを除去していて、ほかの食品を幅広く食べている子では、栄養が不足することはまずありません。
小麦の場合は、パンや麺など主食が抜けることで、食事量そのものが減ることがあります。
除去した食品の名前だけでなく、それが普段の食事でどんな役割を担っていたかを考えます。
牛乳を除去している場合――カルシウムに注意
牛乳・乳製品は、子どもがカルシウムをとりやすい食品です。牛乳200mLには約220mgのカルシウムが含まれます。乳製品を除去すると、牛乳だけでなく、ヨーグルトやチーズからとっていた分も減ります。給食の牛乳を除去している場合は、それだけで1日約220mgのカルシウムをとる機会がなくなります。
小魚、大豆製品、青菜などにもカルシウムは含まれていますが、食べる量まで考える必要があります。牛乳200mL分のカルシウムを納豆だけでとろうとすると、6パック程度が必要です。(→「鉄・亜鉛・カルシウム――不足しやすいのはどんな子?」)
豆乳は牛乳の代わりになるか
豆乳はたんぱく質をとる食品としては使えますが、カルシウムは牛乳よりかなり少なくなります。食品成分表では、200mLあたり牛乳が約220mgなのに対し、無調整豆乳は約30mg、調製豆乳は約60mgです。カルシウムを強化した豆乳や植物性飲料もあるので、牛乳の代わりに使う場合は、栄養成分表示のカルシウム量を確認してください。
乳製品を完全に除去していて、食事だけではカルシウムが足りにくい場合は、アレルギー用ミルクを料理に使うなどして補うことがあります。
⚠️ ヤギ乳などほかの動物の乳は、牛乳と似たたんぱく質を含み、症状を起こすことがあります。自己判断で代わりに使わないでください。
卵を除去している場合――補う必要は少ない
卵に含まれる栄養素の多くは、肉、魚、大豆製品、乳製品からもとれます。卵だけを除去していて、ほかの食品を幅広く食べ、身長や体重も順調に増えていれば、卵の代わりにサプリメントを飲む必要は通常ありません。
卵で気をつけたいのは、栄養よりも、除去の範囲を必要以上に広げないことです。卵は、加熱の程度や料理に含まれる量によって、症状の出やすさが変わります。「どのような調理法の卵を、どのくらい食べられるか」を確認し、食べられる範囲は食事に取り入れていきます。
小麦を除去している場合――主食が減っていないか
小麦を除去しても、ご飯やいも類、米粉を使った食品などを十分に食べていれば、エネルギーは補えます。ただ、食べられる主食の種類が減って、食事量そのものが減っていることがあります。特に食の細い子や偏食の強い子では、主食からとっていたエネルギーを、ほかの食品で補えているかを確認します。
1品だけの除去と、何品もの除去の違い
大豆、魚、ナッツ、甲殻類なども、1品だけを除去していて、ほかの食品を幅広く食べていれば、大きな栄養不足にはつながりにくいものです。ただし、魚を広く除去している場合は、ビタミンDが不足しやすくなります。卵黄や干ししいたけ、きくらげ、アレルギー用ミルクなどで補います。(→「ビタミンD――日光・食事・サプリメントをどう考える?」)
一方、牛乳、卵、小麦、大豆など、複数の食品を除去している子では、栄養の管理が難しくなります。食べられる料理の種類そのものが少なくなるからです。また、症状が出た経験から、医学的には食べてよい食品まで避けるようになることもあります。もともとの偏食に除去が重なることもあります。
こうした場合は、栄養素ごとに考えるより先に、食べられる食品の種類と量を確認します。
栄養状態は、成長曲線と食事から見る
「栄養が足りているか、血液検査で全部調べてほしい」と相談されることがあります。鉄、亜鉛、ビタミンDなど、状況によっては血液検査が役立ちますが、一度の採血で栄養状態のすべてがわかるわけではありません。
まず確認したいのは、身長と体重の推移です。平均より小さいかどうかより、その子自身の成長曲線から外れてきていないかを見ます。体重が増えなくなった、身長の伸びが鈍った、成長曲線を下向きに横切るようになった、といった変化があれば、除去の内容と実際に食べている量を改めて確認し、必要に応じて血液検査を行います。
除去の範囲は、定期的に見直す
乳幼児期に診断され、その後何年も同じ食品を完全除去していることがあります。子どもの食物アレルギーは成長とともに変化し、以前は症状が出た食品を食べられるようになったり、食べられる量が増えたりすることがあります。
これまでの症状、検査結果、年齢などから、今も同じ範囲の除去が必要かを定期的に見直し、必要に応じて食物経口負荷試験で安全に食べられる範囲を確認します。
⚠️ 過去に少量食べられたからといって、自己判断で量を増やすのは危険です。除去を解除したり量を増やしたりするときは、主治医と相談して進めてください。
サプリメントについて
食物アレルギーがあっても、すべての子どもにサプリメントが必要なわけではありません。卵を除去していても、ほかの食品から十分に栄養をとれていれば、特別な補充はいりません。
乳製品を完全に除去していて、食品で工夫してもカルシウムが足りない場合などに、補充を検討します。除去している食品の名前で決めるのではなく、その子の食事全体で実際に何が不足しているかから判断します。(→総論「子どもにサプリメント、飲ませる前に知っておきたいこと」)
まとめ
食物アレルギーの食事管理では、症状を起こす食品を安全に避けることが第一です。そのうえで、除去の範囲を必要最小限にし、除去した食品が担っていた栄養をほかの食品で補えているかを、成長曲線と普段の食事で確認します。除去の範囲は定期的に見直し、食べられるものを安全に増やしていきます。
シリーズ「子どものサプリメント」
・食物アレルギーで除去している子どもの栄養(この記事)
関連シリーズ
・乳幼児の栄養(準備中)
参考文献・参考資料
1. 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会. 食物アレルギー診療ガイドライン2021.
2. Santos AF, Riggioni C, Agache I, et al. EAACI guidelines on the diagnosis of IgE-mediated food allergy. Allergy. 2023;78(12):3057-3076.
3. 「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」検討委員会. 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022(第1.3版). 厚生労働科学研究班. 2024. https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/nutritionalmanual2022.pdf(2026年9月27日閲覧)
4. 文部科学省. 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年). https://fooddb.mext.go.jp/(2026年9月27日閲覧)
5. Venter C, Meyer R, Groetch M, et al. World Allergy Organization (WAO) Diagnosis and Rationale for Action against Cow’s Milk Allergy (DRACMA) guidelines update – XVI – Nutritional management of cow’s milk allergy. World Allergy Organ J. 2024;17(8):100931.
6. Santos AF, Riggioni C, Agache I, et al. EAACI guidelines on the management of IgE-mediated food allergy. Allergy. 2025;80(1):14-36.
7. 日本小児内分泌学会. 成長評価用チャート・体格指数計算ファイル ダウンロードサイト. https://jspe.umin.jp/medical/chart_dl.html(2026年9月27日閲覧)