2026.09.27
子どものサプリメントシリーズ:乳酸菌でアレルギーは防げる?
「腸内環境を整えると、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーになりにくいと聞きました。乳酸菌を飲ませた方がいいですか」
乳酸菌やビフィズス菌を含む食品やサプリメントは、「腸内環境」や「免疫」といった言葉とともに数多く販売されています。アレルギーへの効果を期待して、子どもに飲ませているご家庭もあると思います。
📌 腸内細菌とアレルギーの関係は世界中で研究されていて、乳酸菌やビフィズス菌などの生きた微生物を利用する「プロバイオティクス」についても、多くの臨床試験が行われています。ただ、結論からいうと、アレルギー予防のために乳酸菌を積極的に飲ませることが勧められる段階には、まだありません。
研究が多いのに結論が出ない理由
大きな理由の一つは、研究で使われているプロバイオティクスが、研究ごとに異なることです。例えば、次のような点が違います。
・どの菌種・菌株を使ったか
・1種類か、複数の菌を組み合わせたか
・どのくらいの菌量か
・妊娠中、授乳中、出生後のどの時期に、どのくらいの期間とったか
・どのような子どもを対象にしたか
特に重要なのが、「菌株」の違いです。同じ菌種に分類される乳酸菌でも、菌株が違えば同じ働きをするとは限りません。ある菌株で効果が認められても、別の菌株を含むサプリメントやヨーグルトに、その結果は当てはめられません。
そのため、複数の研究をまとめて平均すると効果が見られても、どの菌株を、誰に、いつから、どのくらい使えばよいのかという、実際に使うための答えが決まっていないのです。
アトピー性皮膚炎の予防――効果を示す研究はあるが、推奨できる段階ではない
プロバイオティクスによるアレルギー予防で、比較的多く研究されているのがアトピー性皮膚炎です。研究をまとめると、妊娠中や出生後にプロバイオティクスをとることで、子どものアトピー性皮膚炎が少なくなる可能性が示されています。ただし、すべての研究で同じ結果が出ているわけではありません。
こうした状況の評価は、国や学会によって分かれています。世界アレルギー機構(WAO)は2015年のガイドラインで、根拠の質は非常に低いとしたうえで、アレルギーのリスクが高い妊婦や授乳中の母親、乳児への使用を条件付きで提案しています。この提案の根拠は主に湿疹の予防に関するもので、ほかのアレルギーを予防する根拠はないとしています。
日本の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」は、妊娠中から出生後の乳児期まで続けてプロバイオティクスをとった場合に予防効果を示すメタ解析がある一方、1種類の菌だけの場合や、乳児だけがとった場合には効果がないとしています。そのうえで、具体的な菌種や方法を示せるだけの根拠はまだなく、予防方法として推奨できる段階にはない、としています。
予防効果の可能性を示す研究があることと、手元の乳酸菌製品で予防できることの間には、まだ大きな隔たりがあります。
⚠️ すでにアトピー性皮膚炎がある場合も、乳酸菌の効果は研究によって結果が一貫しておらず、スキンケアや外用薬による治療の代わりにはなりません。
食物アレルギーの予防――効果は明らかでない
食物アレルギーについても、プロバイオティクスによる発症予防が研究されていますが、現時点で効果は明らかではありません。欧州アレルギー・臨床免疫学会(EAACI)のガイドラインは、妊娠中、授乳中、乳児期のいずれについても、食物アレルギー予防のためのプロバイオティクスを、勧めるにも勧めないにも根拠が不十分だとしています。理由の一つとして、菌によって作用が異なり、ある菌の結果を別の菌に当てはめられないことを挙げています。
すでに牛乳アレルギーがある乳児では、Lactobacillus rhamnosus GG(LGG)という特定の菌株を加えたアレルギー用ミルクで、牛乳を飲めるようになる可能性が高まることを示した研究があります。効果が示されたのは、じんましんなどがすぐに出る即時型の牛乳アレルギーで、根拠の確実性は低いと評価されています。世界アレルギー機構のガイドラインも、LGGを加えたミルクを、加えていないミルクと並ぶ選択肢の一つとして示すにとどめています。
これは乳児期のアレルギー用ミルクについての研究で、乳酸菌のサプリメントやほかの製品に、この結果は当てはまりません。乳児期のミルクの選び方は、「乳幼児の栄養」シリーズで取り上げる予定です。
ヨーグルトは、普通の食品として
アレルギー予防の効果が確立していないからといって、ヨーグルトを避ける必要はありません。乳製品を食べられる子どもにとって、ヨーグルトはたんぱく質やカルシウムをとれる食品です。反対に、アレルギー予防のために毎日特定の乳酸菌をとる必要があるわけでもありません。普通の食品として、食事の中で楽しんでください。
なお、乳酸菌のサプリメントやヨーグルト系の製品には、乳成分を含むものがあります。牛乳アレルギーのあるお子さんは、原材料表示を確認してください。原材料に書かれた「乳酸菌」という表示自体は牛乳とは関係がなく、除去の必要はありません。(→「食物アレルギーで除去している子どもの栄養」)
菌の数や種類の多さで、効果は比べられない
乳酸菌の製品には、「乳酸菌○億個」「○種類の菌を配合」といった表示がよく見られます。しかし、プロバイオティクスは、菌が多いほど、種類が多いほどよい、というものではありません。菌数や菌の種類の多さで、アレルギーへの効果を比べることはできません。
まとめ
腸内細菌とアレルギーの関係は、今も活発に研究されています。アトピー性皮膚炎などを予防できる可能性を示す研究もありますが、どの菌株を、誰に、いつ、どのくらい使えばよいのかは確立していません。
現時点では、アレルギー予防を目的に、健康な子どもに乳酸菌のサプリメントを追加する必要はないと考えます。
シリーズ「子どものサプリメント」
・乳酸菌でアレルギーは防げる?(この記事)
関連シリーズ
・乳幼児の栄養(準備中)
参考文献・参考資料
1. Fiocchi A, Pawankar R, Cuello-Garcia C, et al. World Allergy Organization-McMaster University Guidelines for Allergic Disease Prevention (GLAD-P): Probiotics. World Allergy Organ J. 2015;8(1):4.
2. 佐伯秀久, 大矢幸弘, 荒川浩一, 他. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024. 日本皮膚科学会雑誌. 2024;134(11):2741-2843.
3. Halken S, Muraro A, de Silva D, et al. EAACI guideline: Preventing the development of food allergy in infants and young children (2020 update). Pediatr Allergy Immunol. 2021;32(5):843-858.
4. Bognanni A, Firmino RT, Arasi S, et al. World Allergy Organization (WAO) Diagnosis and Rationale for Action against Cow’s Milk Allergy (DRACMA) guideline update – XI – Milk supplement/replacement formulas for infants and toddlers with CMA – Systematic review. World Allergy Organ J. 2024;17(9):100947.
5. Bognanni A, Fiocchi A, Arasi S, et al. World Allergy Organization (WAO) Diagnosis and Rationale for Action against Cow’s Milk Allergy (DRACMA) guideline update – XII – Recommendations on milk formula supplements with and without probiotics for infants and toddlers with CMA. World Allergy Organ J. 2024;17(4):100888.
6. 「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」検討委員会. 食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022(第1.3版). 厚生労働科学研究班. 2024. https://www.foodallergy.jp/wp-content/uploads/2024/04/nutritionalmanual2022.pdf(2026年9月27日閲覧)